一人勝ち「ポケトーク」は今やタクシー運転手の必需品 開発会社が語る“無料版ネット翻訳”との違い
競争の激化
次にエディオンに取材を依頼すると、担当者が電話で対応してくれた。
「ポケトークは新型コロナウイルスの流行で売上げが落ち込んでいました。ところが、コロナ禍の終息に伴って売れ行きが復活しています。スマートフォンの翻訳アプリなども登場した影響もあってか、コロナ禍前の2019年度ほどの売上ではないものの、2023年上期は前年同期比で5倍以上の売上を示した月もあります。現在は、国内のお客様のご利用が多いですが、次の旅行でも使える、と購入いただく訪日客も増えてきています」
以上の取材結果を踏まえて改めてポケトーク社に取材を申請すると、取締役兼CMOの若山幹晴氏が対応してくれた。
「ポケトークは昨年12月に累計出荷台数が100万台を突破しました。確かにコロナ禍で出荷台数が伸び悩んだ時期がありましたが、流行の沈静化と共にV字回復を果たしました。需要はアウトバウンドとインバウンドの両方で増えています。日本人で海外旅行に行かれる方はもちろん、外国人観光客が訪れるホテル、飲食店、体験型施設、タクシーをはじめとする公共交通機関での導入も顕著です。また、外資系企業が社員を日本支社に赴任させることも復活しており、日本に住むようになった外国籍の社員とそのご家族が購入しているという事例も確認しています」
欧米でも人気商品
新型コロナウイルスが猛威を振るっていた時期は、売れ行きは伸び悩んでいた。とはいえ、意外な“鉱脈”を発見できたという。
「在留外国人の間でポケトークの高性能が広まっていったのです。日本語によるコミュニケーションで困っておられたようで、かなりの台数が売れました。こうした実績を積み重ねてきたことで、弊社は今、海外進出に力を入れています。欧米各国には移民の方も多く、いわゆる“人種のるつぼ”という状態です。言語の壁は日常的に存在し、不自由を感じている住民の数は日本とは比べものになりません。アメリカでは運転免許センターや教育機関など、州政府が一括購入するといった大規模な導入事例も生まれており、非常に強い手応えを感じています」(同・若山氏)
Googleは会社の「ゴールのひとつ」として、「世界中の情報にアクセスできるようにすること」を掲げているのはよく知られている。言葉の壁を越えるため、Google翻訳のサービスを提供しているわけだ。
Googleは文字通りの巨人であり、ポケトーク社にとって勝てる相手ではないはずだ。ところが、若山氏は「勝機は充分にあると考えています」と言う。
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