プロ野球「ファーム・リーグ」、2球団参入で14球団に…王貞治氏の構想に一歩近づくも新たな問題が
巨人・山口オーナーの突然の提案
来季から、プロ野球2軍のファーム・リーグ（イースタンウエスタン）に一つずつ、新規球団が参入することになった。NPBの審査を経て、9月29日の12球団オーナー会議で内定したのは、新潟の「新潟アルビレックス・ベースボール・クラブ」（イースタン）と静岡のハヤテ223（ふじさん）が運営する新チーム（ウエスタン）。11月22日の次回オーナー会議で正式決定される。
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新潟は球界再編問題の起きた2004年に、“13番目のプロ野球チーム”として立候補し、その後、独立リーグ・ルートインBCリーグを牽引してきたので野球ファンの間では有名だ。監督は元ヤクルトで、楽天、西武、巨人などでコーチを務めた橋上秀樹氏（57）。一方、ハヤテ223は今年4月に産声を上げたばかりだが、経営持続性や球場、練習場の確保など、NPBが重視した7項目の参加要件をクリアした。
ハヤテの勝因はさまざまだ。本拠地の静岡県はこれまでにも12球団合同トライアウトの会場に立候補するなどし、地元の野球熱を高めてきた。今年4月、球団の親会社となるハヤテグループは静岡市と協定を結び、市が総工費約60億円を掛けて05年に開業させた「清水庵原球場」をハヤテ223の本拠地とすることを決定。この球場は高速のICから近く、バス移動の多い2軍戦には最適だ。地元メディアによれば、ベイスターズ監督の山下大輔氏（71）にも声を掛けており、球団の要職に就くという。
ファーム・リーグでは来季14チームで年間140試合を予定しているが、今回のファーム拡大構想の先には“20球団・地区制の新リーグ構想”までもが見えてくる。
「新規2球団の活動は、あくまでも2軍のみ。NPBのドラフト会議には加わることができないので、ハヤテ223は11月3～4日に独自のトライアウトを実施する予定です」（地元・静岡メディア関係者）
今回の構想は、昨年7月21日のオーナー会議に始まる。巨人・山口寿一オーナー（66）から、ハヤテの母体である投資会社「ハヤテインベストメント」の2軍参加の提案がなされたのだ。
「通常、オーナー会議で提議される議案は、事前に開かれる12球団実行委員会で整理されています。だから、他球団も実行委員会を通じて何か提案があることは分かっていましたが、内容はオーナー会議で初めて知らされました」（NPB関係者）
その場ではすぐに否定的な意見は出なかったという。楽天イーグルスが新規参入した05年以降、イースタン7球団、ウエスタン5球団のバランスの悪い状態になっており、全球団が「このままではマズイ」と思いながらも解決案を見出せないままだったからだ。
預かり保証金30億円をどうするか？
だが、野球に縁のない企業の突然の参加提案に、驚きを隠せない関係者もいたという。何より、新規参入となれば、野球協約により「預かり保証金」の30億円をNPBに納めなければならない。
ただ、巨人やNPBの一部関係者は、早い段階からハヤテインベストメントから相談を受けていたようだ。同社は子会社のある静岡市葵区に球団の拠点を置くとし、その参入の是非を協議する予定でいたが、相談の回数が増えるにしたがって、NPB内でも「他企業にも声を掛ける公募制がいい」という意見が出るようになった。
同年11月のオーナー会議で、山口オーナーは“新たな定義”を提案した。新球団はファーム拡大のための「参加」とし、NPBに「加盟する」のではなく、2軍戦を拡大するために参加してくれる新チームからは預かり保証金を取らなくても良いのではないか、と。そして、参加を希望する球団を公募することになった。
「野球の裾野拡大、振興、地域での活動のためにも、注目すべき提案でしたが、それでも独立リーグのチームや、社会人チームがどのような反応を見せるのか、分かりませんでした。1軍昇格の可能性がないのに、リーグ加入を考えてくれるのかどうか心配だったのです」（在京球団スタッフ）
「今年4月以降、興味を持ってくれた企業、団体に向けた説明会を何回か開きました。9団体から応募がありました。その後、個別のヒアリングもして、資金面や球団運営などを詰めていきました。最後まで立候補を希望したのは3団体でした」（前出・関係者）
その3団体から選ばれたのが、ハヤテ223と新潟アルビレックスというわけだ。他に名乗りを挙げた団体の途中棄権の主な理由は、やはり準備不足。シーズンを乗り切るため、少なくとも40人前後の選手を確保しなければならない。遠征費、施設管理費などを含めると、たとえ2軍であっても億単位の出費が出る――だが、「再チャレンジの意欲も伝わってきた」（前出・同）という。
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