ドラフト直前に「隠れ即戦力」候補が浮上! 独立リーグの「最速159キロ右腕」ら“有望株5人衆”

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阪神「中野拓夢」に似たプレースタイル

 次に、“隠れ即戦力”として期待される野手を見ていこう。内野手は、武田登生(日本新薬)が有望株だ。中央学院大時代は、4年秋に明治神宮大会で優勝を経験したほか、社会人では1年目からショートのレギュラーで活躍している。身長170cmと上背はないが、軽快な守備とパンチ力のある打撃が持ち味。プレースタイルは、今シーズン、セ・リーグで最多安打(164本)のタイトルを獲得した中野拓夢(阪神)と似ている。

 武田は、今年の都市対抗にパナソニックの補強選手で出場。ヒットは出なかったものの、本職ではないセカンドを任されて、たびたび好守備を連発した。いきなりレギュラーとはいかなくても、内野のバックアップで一軍の戦力になることは十分に考えられる。

 一方、外野手は、独立リーグの尾田剛樹(BCリーグ栃木)が面白い。大阪観光大では二部でプレーすることが多く、それほど注目される存在ではなかったが、独立リーグ1年目の今年はいきなり外野の定位置を獲得した。

 最大の武器はスピードで、リーグ戦65試合で32盗塁をマークしている。打撃は、シーズンを追うごとに力強さが増しており、9月に行われた巨人三軍とBCリーグ選抜の交流戦ではセンターへのスリーベースを放った。機動力が不足している球団に入団できれば、1年目からレギュラー争いに加わることも期待できそうだ。

「スカウトの目に留まる機会が少ない」

 以上のように、“隠れ即戦力”の可能性がある5人の選手を紹介してきた。読者の方は、即戦力の期待ができる選手であれば、もっと評価が高くなるのではないかという疑問を持つかもしれないが、ドラフトの指名順位は、そんなに単純なものではない。今年、活躍している選手の例を挙げながら、NPBのスカウトはこのように話す。

「大学生であれば、どうしても地方のリーグは全国大会の出場や大学日本代表選出経験がないと、多くのスカウトの目に留まる機会は少ないです。昨年の松山晋也らは、その典型例ですね。松山は4年の秋でよくなった選手なので、支配下で指名されずに育成ドラフトまで残っていた理由だと思います。一方、社会人でネックになるのは、やはり年齢ですね。大学卒で2年プレーしてプロに入ると、24~25歳からのスタートになってしまう。プロでいきなり主力になるくらいの選手ではないと、なかなか高い順位では指名しにくい。ただし、社会人や独立リーグの選手の中には、(打撃や守備、走塁といった)ある部分は、一軍と変わらないという選手も多いですから、そういう選手を、(ドラフト順位の)下位や育成で狙って補強したいと、どの球団も考えていると思いますよ」(パ・リーグ球団スカウト)

 果たして、今年のドラフト会議で指名される選手から、どんな“隠れ即戦力”が出てくるだろうか。ぜひ注目していただきたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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