“望月衣塑子記者”を容認する「東京新聞」の社風…コラム連載中の「ネットニュース編集者」が見た実態とは
内容面でのダメ出しはなくなった
そして、この自由な空気感は私のような外部寄稿者にも適用される。私の担当は毎週土曜日の「特報面」にて、ネット上で起きた事件や騒動を報告するコラム。これまで570回ほど書いてきたが、98%の確率で私へのダメ出しがないのだ。別に「東京新聞の論調に合わせてください!」なんてことは言わないし、「安倍晋三さんをホメないでください!」のようなガイドラインもない。「このテーマで書いて自民党を叩いてください!」という要求もない。
数少ないダメ出しは最初の2回。完全書き直し、ともいえるレベルで原稿を修正するよう指示された。私は新聞コラムを書いたことがないため、どうも異色の文章過ぎたのだ。「中川さんは着眼点とネタの発掘はいいのですが、『新聞っぽくない』のです」。そこでとある夜、特報部長だった稲熊均氏からバーで新聞コラムの書き方スパルタ塾を受け、内容面でのダメ出しはなくなった。その後のダメ出しというか、書き直し依頼はこんな感じでされる。
「今回原稿ありがとうございました。しかし申し訳ありません。すでに特報面で同じテーマの記事を作っていており、大変恐縮ですが別のテーマで執筆いただけませんでしょうか」
幸せな人生
ここまで東京新聞について振り返ってきたが、望月氏のような記者が働ける会社は良い会社なのではなかろうか。ジャーナリズム界で社員でありながら目立つ社員がいると求人にも有利な気がする。幻冬舎の箕輪厚介氏、新潮社の「親方」こと中瀬ゆかり氏、鳥山明氏の担当で「Dr.マシリト」のモデルである元集英社の鳥嶋和彦氏らも該当するだろう。そういった意味で望月氏は見も知らぬネットの人々からいくら批判をされようが、会社が容認している以上幸せな人生だとフリーランスの私など思ってしまうのである。