「妻ともここで出会いました」 立ちんぼ女子を「買う」男たちの事情

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スケベ根性の男がいなくなればいい

 女性保護団体と衝突していた迷惑系YouTuberについては、彼なりの“怒り”を表す。

「てっきり女性の味方かと思ったら、あいつらに追いかけられた子がいたみたいで。バズればいいのかよって。女性保護団体を攻撃して炎上させたいだけでしょう。その証拠に、今はパッタリ来なくなったでしょ。その程度なんだよ」

 筆者はジュンイチ氏の罪悪感を否定するつもりはなく、それも本心の一つであろうと感じた。だが、筆者が出会った男性たちに共通するのが、やはり当事者意識が希薄である点だ。それは、性にまつわる不祥事を起こした場合の社会的地位への影響が、女性とは非対称であることも関係しているように思えた。実際、ジュンイチ氏は「ここでYouTube に晒されても、別に結婚してるわけじゃないし、話してるだけだと言えば問題ない。会社にバレたって『何してんの? ワハハ』と笑われてお咎めなしだと思う」と語った。

「いつまで続けるかは決めていない。矛盾するようだけど、こんな場所はないほうが世のためだと思う。女性だけでなく、スケベ根性の男がいなくなればいい。本当に変な場所だよ。あそこ病院だからさ。入院患者にも大迷惑だよ」

 終始、他人事のように話すジュンイチ氏。ここまで言行不一致だと、もし筆者がジュンイチ氏と近しい関係であったなら、性依存の治療をするよう助言するだろう。彼が罪悪感を本当に払拭したいのであれば、それが最善であるように思えた。

女性に依存した男性たち

 路上売春が行われる場所は大久保公園だけではなく、全国にある。また、たとえ一箇所が「浄化」されてもすぐに他の場所で復活するのは明らかだ。筆者は根絶のためには取り締まりだけではなく、関わる人々のメンタルケアが必要であることを感じた。

 今回接触した多くの男性が、「やめたいけどやめられない」と口にした。そして多くの女性がホストやメンズ地下アイドルに貢ぐために、体を売る。それらは、重度の依存状態といえる。

 生育環境で得た心の傷により、社会生活を送れず路上売春に身をやつすケースも多いだろう。路上売春女性に長く密着したライターの高木瑞穂氏も著書『ルポ新宿歌舞伎町 路上売春』(鉄人社)で「振り返れば、過去に取材したセックスワーカーたちにしても、精神疾患や発達障害、愛着障害が背景にあることが少なくなかった。(中略)この問題を直視しなければ、街娼たちの不遇な生い立ちをいくら記しても机上の空論になるだけだと思ったからだ」と記している。なお、依存症も愛着障害が原因となっている場合が多い。

 9月の摘発以来、大久保公園周辺の光景は様変わりしている。路上に行き交う男女はすっかり鳴りを潜め、路上買春は「一掃」されたかのようである。これが一過性のものであるかは注視する必要があるが、今後また復活するようであれば、行政には路上でさまよう女性たちに対し、カウンセリングなどのメンタル的な支援を無料で提供することを提案したい。そして公園界隈に限らず、男性たちには、なぜそれほどまでに女性に依存してしまうのか、寂しさを埋めるために他人の体を使わなければならないのかということを、一度改めて考えてみてほしい。

安宿緑
東京都生まれ。ライター、編集者。東京・小平市の朝鮮大学校を卒業後、米国系の大学院を修了。朝鮮青年同盟中央委員退任後に日本のメディアで活動を始める。2010年、北朝鮮の携帯電話画面を世界初報道、扶桑社『週刊SPA!』で担当した特集が金正男氏に読まれ「面白いね」とコメントされる。朝鮮半島と日本間の政治や民族問題に疲れ、その狭間にある人間模様と心の動きに主眼を置く。韓国心理学会正会員、米国心理学修士。著書に『実録・北の三叉路』(双葉社)。

デイリー新潮編集部

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