立ちんぼ女子を「買う」男たちの事情 「婚活の憂さ晴らし」「恋人では得られない興奮を求めて」

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「外野からとやかく言われる筋合いがない」

 昨今の大久保公園周辺は、性の多様性の見本市のようになっている。トモヒロ氏も最近、怖い思いをしたという。

「3週間くらい前にハイジア(※歌舞伎町にある超高層ビル)の入り口に座ってたら南米系のガタイの良い男に声をかけられた。『お兄さん、好みだから遊ぼうよ』って言われて、体をベタベタ触られたので逃げたよ」

 買春帰りの男性をさらに買おうとする男。まるで、虫や魚の食物連鎖のようである。

 おかげで女性側の心情を間接的に体験できたともいえるが、他の男性同様、自らの買春行為について罪悪感はないと話す。

「お互い合意しているんだから、外野からとやかく言われる筋合いがない。なんでいちいち咎められないといけないのかな。それだったら女の子に対して、国がやることがあるんじゃないの? ただ取り締まるだけじゃダメでしょ。女の子は奨学金を返すためだったり、親の介護をしていたりする 子もいる。パパ活じゃあるまいし、話を盛ったところでカネは出ないから、おそらく本当なんだと思う。彼女たちはアルバイトじゃ食えないから立ちんぼをやるしかない状況なんだよ」

 男性たちのこうした言葉は一見、筋が通っているかのように 聞こえるが、あくまで“消費者”としての意見だ。見ず知らずの男性に体を売るまでに生じる女性たちの葛藤や、売ったことによる傷つきについて思いを馳せることはない。

 トモヒロ氏からは逆に「あなたはやってみようと思わないの?」と聞かれ、筆者は答えに詰まってしまった。当然、見ず知らずの男に体を売るなど考えられないことであるが、そうせざるを得ない状況であれば選択肢に入れないと断言できない。だが、そうなれば何とか痛覚を麻痺させるため苦心し、心を殺すだろう。男性たちに見えていないのは、そのプロセスなのだ。

「今度はご馳走しますよ笑」

 トモヒロ氏からは、やや不安定な印象を受けた。結婚願望がないといい、結婚制度に対する批判を繰り返しながらも「ぶっちゃけ言うと寂しいんですよ。公園にきたら関わりが持てるから」と話したり、遵法意識について間をおいてもう一度聞くと、「一応、悪いとは思っている」とも言う。

 追加取材があるかもしれないので筆者がLINEの交換を申し出ると「まだ仲良くなっていないから」と断られ、それもそうだ、と思い引き下がった。しかし数日後、筆者の名刺に記載してあるQRコードを経由してLINEが届いた。

〈また飲みたいですね~今度はご馳走しますよ笑(中略)新宿います~もしよろしければLINEもらえたら嬉しいです〉

後編【「妻ともここで出会いました」 立ちんぼ女子を「買う」男たちの事情】へつづく

安宿緑
東京都生まれ。ライター、編集者。東京・小平市の朝鮮大学校を卒業後、米国系の大学院を修了。朝鮮青年同盟中央委員退任後に日本のメディアで活動を始める。2010年、北朝鮮の携帯電話画面を世界初報道、扶桑社『週刊SPA!』で担当した特集が金正男氏に読まれ「面白いね」とコメントされる。朝鮮半島と日本間の政治や民族問題に疲れ、その狭間にある人間模様と心の動きに主眼を置く。韓国心理学会正会員、米国心理学修士。著書に『実録・北の三叉路』(双葉社)。

デイリー新潮編集部

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