立ちんぼ女子を「買う」男たちの事情 「婚活の憂さ晴らし」「恋人では得られない興奮を求めて」
新宿区立大久保公園周辺、通称「交縁」(こうえん)を訪れると、若い女性が一定間隔で並び、客を待つ姿が目に入る。いわゆる「立ちんぼ女子」である。彼女らを取材した記事は数多あり、生活苦やホストへ貢ぐための資金調達など様々な背景があるという。しかし、彼女らを「買う」男性の事情はほとんど見えてこない。ライターの安宿緑さんが「立ちんぼ女子」を買う男性5人の実像を取材した。(全2回の1回目)
【写真】「ホテルに行くだけじゃない楽しみ方がある」というトモヒロ氏(独身・40代後半)のブルーのチェックシャツ姿。一定間隔で並んだ「立ちんぼ女子」たちが交渉する様子
「僕にとって公園はディズニーランドみたいなもん」
現地を訪れたのは残暑の続く、9月初頭。立ち込める熱気と臭気が、公園の光景の異様さを際立たせていた。
大久保病院の壁沿いと玄関前の広場に佇む若い女性たちと、その周囲を徘徊する男たち。彼らは何度も同じ場所を通り過ぎては戻ってきて、路上に立つ女性を品定めする。そして、それを公園側のガードレールに腰掛けて眺めるだけの男たち。これが公園前の大まかな光景である。
10月3日、警視庁保安課は東京・新宿歌舞伎町の大久保公園周辺の取り締まり状況を公表し、今年の1月から9月までに売春防止法違反容疑で女性80人を摘発したと発表した。9月の取り締まりでは20~46歳の女性35人を摘発。そのうち7割が20代で、4割がホストクラブの売掛金の返済や、メン地下(男性地下アイドル)へ貢ぐための金をここで稼いでいたという。
筆者は、女性を「買う」男たちの話を聞くためにここに来た。なぜ、買う側の男性が透明化されているのか。報道で彼らに焦点が当たらない点に疑問を感じていたのはもちろん、彼らはどのような存在なのか純粋に気になっていたのだ。
「大久保公園にくるたびに3、4時間は歩いてる。万歩計でいうと2万歩くらいですね。2万歩はディズニーランドを一周するのと同等と言われているから、僕にとって公園はディズニーランドみたいなもん」
そう冗談めかして話すのは、ヒロ氏(仮名・30代前半)。東南アジア系のアイドルを思わせる、目鼻立ちがはっきりしたルックスをしている。1年半前から大久保公園に通い始め、これまで10人以上の女性を買ったという。ここの存在を知ったきっかけは、仕事帰りに通りすがり、人だかりができているのを見て気になったことだった。
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