「頑張ってください」はNG…「四国遍路」への誤解、そのせいで起きているトラブルの数々を反骨の言語学者“F爺”が解説

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カトリック教のコンポステラ歩き詣で

 カトリック教の多数ある聖地の一つ、スペイン北西端のガリシア州のサンティアゴ・デ・コンポステラに至る行は、何世紀もの間、
「自宅の戸口から大聖堂まで、何千キロあろうとも歩くもの」
だった。

 誤魔化しをする人が多かったようで、現代では、
「少なくとも最後の100キロメートルは歩かなくてはならない」
と決まっている。

 しかし、今でも、律儀に自宅の戸口から歩く人もいる。

神佛習合は世界的に稀有な現象

 近年、何をどう誤解したのか、カトリック教徒でない日本人でコンポステラ詣でが目的でスペインに渡航する人がいる。当人にとって無意味な行動であり、カトリック教会にとっては冒瀆である。

 日本を一歩離れたら
「宗教同士、宗派同士は、とことんいがみ合うもの」
であり

「諸宗教混淆は非常識」
だということが一日も早く日本に住む日本人にとっても常識になって欲しいものだ。

「宗教間の対話」は、標語としては成立しているが、未だに幻想の域を出ないのが現実である。

小島剛一(こじま・ごういち)
1946年、秋田県生まれ。1968年以来フランス在住。1973年以来、フランス人向けの日本語教育にも携わっている。1978年、ストラスブール大学人文学部で博士号取得。専攻は言語学と民族学。1980年代初頭以来、フランス人などに日本語の歌を歌わせる合唱団を指揮しており、作曲も編曲も手掛ける。1986年9月、トルコ共和国で少数民族言語臨地調査のための「研究調査ビザ」を所持していたにも拘わらず国外退去勧告を受ける。2003年7月、イスタンブールで合法的に『ラズ語文法』を上梓した数日後に国外追放処分を受ける。著書に『トルコのもう一つの顔』(中公新書)、『漂流するトルコ――続「トルコのもう一つの顔」』(旅行人)、『トルコのもう一つの顔・補遺編』(ひつじ書房)、『再構築した日本語文法』(同)など。

デイリー新潮編集部

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