東京と高知の2拠点生活を送る歌人・岡本真帆が東京に来たら絶対に映画館に行く理由 「高知では往復5時間と9千円がかかる」

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映画館まで片道2時間半

 第1歌集『水上バス浅草行き』を昨年刊行し、令和の短歌ブームの火付け役ともいえる歌人・岡本真帆さん。高知県に住まい、2カ月に1度上京する2拠点生活を送る彼女が、東京を訪れる度に足繁く通うのは映画館だという。ささやかな日常を歌に描きとる彼女は、数々の作品をどう味わうのか。

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 渋谷区の会社に勤めながら、高知県四万十市で暮らす2拠点生活をしている。フルリモートで働き、だいたい2カ月に1度東京にやってくるのだが、東京滞在中私には通わなければならない場所がある。映画館だ。

 地図を見ると分かるのだが、高知県はとても、横に長い。一番近い映画館は高知市のTOHOシネマズで、自宅から100kmのところにある。列車で約2時間半、運賃は片道約4500円。1本の映画を観るには、往復するだけで5時間と9千円がかかってしまう。

 東京にいた頃、週に2本は映画を観ていた。座席に沈み込みスクリーンを見上げる。大げさかもしれないが「今、生きているなあ」と実感する。作品の世界に没頭できる映画館。映画を上映するためだけに造られた部屋に、作品を楽しみにしてきた人たちが集まる。上映が始まれば、ひととき現実のことは忘れて映画の世界に夢中になる。あの空間と時間が私はたまらなく好きだ。社会人になったばかりの頃は、上映が深夜に終わる作品も多かった。終電がない時間帯。映画のことを考えながら、家まで歩いて帰った。

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