黒人に反発する選手たちを変えたネルソン・マンデラとラグビー南ア主将・ピナールの感動の物語(小林信也)
決勝ニュージーランド戦
映画では、初戦のオーストラリア戦に勝った後の祝勝会中、ピナールが「明日は朝6時、ランニング!」と選手たちに伝えて回る。翌朝、選手たちが走った先は港だった。小さな船に乗り、彼らはロベン島に渡った。実際にはこの出来事は大会直前だといわれている。マンデラが27年間も収監された刑務所のある島。ピナールら選手たちは途方もなく長い年月をマンデラが過ごした独房の狭さ、粗末さに衝撃を受けた。
「半年前の国歌斉唱の時、選手は黒人の抵抗歌だった冒頭を露骨に無視していた。ところが開幕戦では新国歌の演奏前から全員、真摯な姿勢で、右手を胸に当てていた。その変わり様を見て感動しました」(永田)
白人を恨んで当然のマンデラが、白人文化の象徴スプリングボクスのジャージをまとって決勝前のロッカールームに現れた時、選手全員、特別な感銘と高揚感で触発された。ピナールは、自分の背番号6をマンデラの背中に見て言葉を失った。
決勝の相手は「暴走機関車」ロムーを擁するニュージーランド。スプリングボクスはロムーを封じ、9対9で延長に持ち込んだ。12対12で迎えた延長後半4分、ストランスキーがドロップゴールを決め、南アフリカが初優勝を飾った。スタンドでも街角でも白人と黒人が抱き合って喜んだ。
「ワンチーム、ワンカントリー(ひとつの国)」はこうして実現した。
[2/2ページ]