【竜王戦】藤井聡太が挑戦者・伊藤匠に2勝 八冠獲得後の初戦でも見せた「強い自制心」

国内 社会

  • ブックマーク

 前人未到のタイトル八冠独占を果たした将棋の藤井聡太八冠(21)が、10月17、18日の両日、京都府京都市の仁和寺で行われた竜王戦七番勝負(主催・読売新聞社)の第2局で、挑戦者の伊藤匠七段(21)を107手で破って対戦成績を2勝とした。藤井は竜王戦3連覇を目指している。【粟野仁雄/ジャーナリスト】

伊藤が封じる

 11日に八冠を達成している藤井は、これで通算タイトルが18期となり、歴代6位の米長邦雄永世棋聖(1943~2012)の19期まであと一つ、さらに、昭和の名棋士・大山康晴十五世名人(1923年~1992)が持つ「タイトル戦19連覇」の記録にもあと一つと迫った。

 八冠達成後の初戦に勝った藤井は「八冠を意識せずに指せた」と言い、「こちらが仕掛けていき、攻めが細いので、微妙かなと思っていた」などと反省を口にした。

 先手は藤井。藤井が得意とする「角換わり」から、じっくりと進んだ。57手目の「5二角」に藤井は98分をかけたが、中盤に入ると早くも一触即発の緊迫した局面になった。

 藤井は59手目も長考し、午後6時が迫る。対局を中継するABEMAで解説を担当した行方尚史九段(49)は「このまま封じるでしょう」と話していたが、藤井は65分の長考の末に「4七金」と指した。これで伊藤が封じることになった。

土壇場で大長考した伊藤

 伊藤の60手目は藤井の桂馬を取り込んで「と金」を作る「3七歩成」に決まっているが、これを藤井が「同金」で取り返すのも当然の手。仮に伊藤が60手目を指して藤井に応じられれば、次の難しい62手目で封じ手を書かなくてはならない。そのため60手目で封じたのである。これが封じ手の駆け引きでもある。

 翌朝、立会人の谷川浩司十七世名人(61)によって開かれた封じ手は、予想通り藤井の桂馬を取り込んだ「3七歩成」。そして藤井も「同金」と指した。

 ここでやはり、62手目の伊藤は大長考する。「昨晩も考えていたんですけど」と言っていたので結論が出ないまま朝になったようだ。94分かけた末に「3三歩」と打った。

 ABEMAで解説していた鈴木大介九段(49)は「昔はこういう手は悪手とされたんですが、AI(の登場)で変わりました」と話す。谷川名人は「伊藤七段が苦しいとは思いますが、『3三歩』は伊藤七段が簡単には崩れませんよと力を見せた一手だと思いますね」と解説する。

次ページ:秒読みに追われた伊藤

前へ 1 2 3 次へ

[1/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。