「クマ被害」激増でも駆除にクレーム殺到…秋田出身のライターが訴える「野生の熊は“プーさん”とは大違いです」

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熊が好きな人は秋田県に住んでみては

 熊が殺されるのが嫌だ。
 熊が好きでたまらない。
 熊が推せる。
 熊のことを考えると夜も眠れない。

 このように、熊を愛してやまない人に提案がある。ぜひ、秋田県に移住を検討して欲しい。秋田県は人口減少率がダントツ日本一である。野生動物よりも人間の方が絶滅しそうな状況に追い込まれている。そんな県に移住者が増えれば、人口も増加するし、一石二鳥だ。

 熊が大好きな人に、秋田県は文句なしでおすすめできる県である。普通に熊がいるし、山にキノコ狩りに入って、運が良ければ熊にばったりと出くわすことも可能だ(経験者談)。熊を愛するみなさんは、ぜひ秋田県で動物と共生する理想の社会の構築を模索して欲しいものである。

 秋田県では「熊出没注意」と書かれた立て看板があちこちで目に付くほど、県民の多くが熊を恐れている。熊の愛好家は熊と人間が共存できる具体的な方法があるのであれば、離れた場所から役場に電話するのではなく、現地に住み、住民に提案していただきたい。成功すれば熊が秋田県の観光資源になる可能性があるし、県民の熊に対するイメージを変える力を持ち得るかもしれない。

森が荒れているのは気になる

 前述のように、筆者はキノコ狩りが趣味なので、帰省のたびに山に入る。気になるのは、年々、山が荒れてきていることだ。山を管理する人が減っているのか、下草が生い茂り、特に杉の木は伸び放題になって、春になると花粉を大量にまき散らしている。筆者が小学生の頃、キノコ狩りのために通っていた道も、気づいたら草に覆われてしまっていた。

 かつて、人間と熊は共存関係を築いていた。人が山の中に入っていたことで、人と動物の居住地の棲み分けがなされ、森の環境も良好に保たれていた。しかし、いつの間にか山は荒廃し、植生のバランスも崩れてしまった。これが、熊が餌を求めて人里に降りるようになった要因のひとつなのかもしれない。

 秋田県は野生動物の減少以上に、人口の減少が深刻な問題である。熊に関する問題を少しでも解決するためには、人口を増やし、森を守る人を増やすことが重要であろう。動物は人間と違い、クレームを入れるだけで解決できる相手ではないし、共存は一朝一夕にはできない。森を守り、人と熊が互いを理解し合うために、多くの人たちで知恵を出し合うべきだと思う。

山内貴範(やまうち・たかのり)
1985年、秋田県出身。「サライ」「ムー」など幅広い媒体で、建築、歴史、地方創生、科学技術などの取材・編集を行う。大学在学中に手掛けた秋田県羽後町のJAうご「美少女イラストあきたこまち」などの町おこし企画が大ヒットし、NHK「クローズアップ現代」ほか様々な番組で紹介された。商品開発やイベントの企画も多数手がけている。

デイリー新潮編集部

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