「日本のお笑い」に苦手意識があったライター・野村麻里がドハマりしたきっかけは? 「お笑いに覚える不快感を無視してはいけない」

エンタメ

  • ブックマーク

「不快感を無視してはいけない」

 それからは、お笑い番組やYouTubeを見まくり、次々に面白いと思う芸人を見つけて、彼らの舞台まで見に行くようになった。ここ8年くらいは英国の俳優に夢中になって、ギリシャ悲劇やシェイクスピア、現代詩まで読みまくり、せっせとロンドンやニューヨークの劇場へ行っていたから、やっていることはほぼ同じではある。

 2000年代に比べると、お笑いもずい分と変化したが、圧倒的なジェンダーギャップや、やりとりに潜む攻撃性など、気になることがないわけではない。もちろん、芸人もさまざまで決してひとくくりにはできない。しかし見れば見るほど、お笑いが私自身と、私が暮らすこの社会を映す鏡であると感じる。だから、そこで感じる不快感を無視してはいけない、と肝に銘じている。

 笑いは人を正直にさせる。面白いがどこか恐ろしくもある。それでも今は、日本のお笑いを見るのが楽しい。

野村麻里(のむら・まり)
1965年東京生まれ。ライター、編集者。著書に『香港風味』『ひとりで食べたい』、編著に『作家の手料理』などがある。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。