【ジャニーズ問題】被害者は巨額の賠償金を求め、米国で民事訴訟を起こせるのか? 弁護士の見解
米国での訴訟は可能か
被害者の一部は米国での民事訴訟も視野に入れているとの報道もある。50年以上にわたり数百人の被害者がいる問題である。加害者はすでに故人とはいえ、賠償額は莫大な金額になるだろう。だが、日本人が米国で訴訟を起こすことは可能なのだろうか。
米国の弁護士資格を持つ日本人弁護士が言う。
「一般論としてですが、米国で訴訟を提起することに制限はありません。提起するにあたり形式的な不備がなければ、訴訟を起こせる可能性はあると思います。米国では性的虐待に対する注目度は非常に高いですから」
日本では裁判所の管轄権というものがある。民事訴訟法には《裁判所は、人に対する訴えについて、その住所が日本国内にあるとき、住所がない場合又は住所が知れない場合にはその居所が日本国内にあるとき、居所がない場合又は居所が知れない場合には訴えの提起前に日本国内に住所を有していたとき(日本国内に最後に住所を有していた後に外国に住所を有していたときを除く。)は、管轄権を有するものとする》とある。つまり、日本に住んでいなければ裁判は起こせないというわけだ。
「米国では、裁判管轄が唯一というわけではありません。訴訟を提起するとまず要件のチェックがあり、それが欠けている場合は管轄外になる可能性もあります。ただ、被害者の方々が米国で訴訟を起こしたとなれば、向こうでは日本よりもさらにセンセーショナルに報じられるでしょう。大手芸能事務所のトップが行った性的虐待と言われるわけで、徹底的に叩かれるでしょう。そうした世論を味方につければ、ひょっとすると……」
米国の弁護士は、裁判がお金になるかも考慮するという。
「Ambulance chaser(救急車を追いかける人)という言葉がありますが、交通事故の被害者を乗せた救急車を弁護士が追いかけ、被害者に損害賠償訴訟を持ち掛けるという意味です。ジャニー喜多川氏は米国にバックグラウンドがあったので、海外資産もあるかもしないと踏む弁護士もいるでしょう」
一部では、すでに米国の弁護士が被害者に訴訟を持ち掛けているという報道もある。
「あり得ない話ではありません。さすがに表立っての営業は弁護士倫理に触れるのでやらないでしょうが、水面下でやる人がいてもおかしくありません。また、米国で訴訟の準備に入ったというポーズを見せるだけでも、国内での補償額を吊り上げることも可能でしょう」