【ジャニーズ問題】被害者は巨額の賠償金を求め、米国で民事訴訟を起こせるのか? 弁護士の見解
10月17日、ジャニーズ事務所はSMILE-UP.(スマイルアップ)に社名を変更し、今後はジャニー喜多川氏(1931~2019)による性加害問題の補償業務に専念するという。果たして、その補償額はどこまで膨れ上がるのだろうか。
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英国BBCの長編ドキュメンタリーを発端に日本の新聞やテレビも報じるようになったジャニー喜多川氏の性加害問題。国連人権理事会も調査に乗り出し、《ジャニーズ事務所のタレント数百人が性的搾取と虐待に巻き込まれるという、深く憂慮すべき疑惑が明らかになった》《日本のメディア企業は数十年にもわたり、この不祥事のもみ消しに加担したと伝えられている》との声明が出された。
ジャニーズ事務所の東山紀之社長(57)らが2度の会見を行ったものの、被害者らへの補償については具体的なものは提示されていない。
そこで引き合いに出されるのが、日本と欧米(特に米国)との違いだ。例えば、#Me Too運動の引き金となったハリウッドの大物映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン(71)の性的虐待事件である。
2017年10月、ニューヨーク・タイムズ紙が、ワインスタインが数十年にわたり性暴力や性的虐待を行っていたことを報じると、社会的大問題に発展した。翌年5月、彼はニューヨーク市警に逮捕され、20年6月には禁錮23年の判決が下された。後にロサンゼルスでも起訴されて禁錮16年が加わり、現在、禁錮39年の刑で服役中だ。また、被害者の女性らに和解金1900万ドル(約20億4000万円)が支払われるとも報じられた。日本の裁判ではあり得ない、とてつもない賠償額だろう。
性的虐待が原因で破産するケースも
サンダスキー事件というのもある。2011年11月、ペンシルバニア州立大学のアメリカンフットボール部の守備コーチ、ジェリー・サンダスキー(79)が、少年への性的虐待の容疑で逮捕された。1994年頃から15年間にわたり、8歳から17歳の少年に性的虐待を繰り返していたという。サンダスキーには最短30年、最長60年の禁錮刑が下されたが、それだけでは済まされなかった。大学の学長や副学長、体育局長らは、虐待の事実を知っていたにもかかわらず通報などの適切な対策を講じなかったため、大学を解雇された上に逮捕。同校アメフト部の歴代最多勝利監督ジョー・パターノ(1926~2012)は、生涯成績409勝136敗3分を記録していたが、事件を知り得た時期以後の111勝は抹消され、最多勝利監督の栄誉は剥奪された。さらに、大学は被害者たちに総額270億円もの和解金を支払うことになった。
また、アメリカ体操連盟で1995年から2015年までチーム医師を務めたラリー・ナサール(60)が、五輪金メダリストのシモーネ・バイルズ(26)など女子選手数百人に性的虐待を行ったことが発覚。ナサールには禁錮40年から175年の刑が下され服役中だが、刑務所では他の受刑者に何度も刺されるなどしている。被害者への和解金は総額でおよそ1300億円にのぼり、体操連盟は破産した。同様に性的虐待が原因で破産した団体には、米ボーイスカウト連盟もある。
ことほど左様に、米国では性的虐待に対する責任は重い。それゆえ、もしジャニーズ事務所が米国で裁判を起こされたら、どのような判決が下されるのかという報道が相次いだ。
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