獲得賞金1億2千万円超えの藤井八冠の影響で他の棋士の収入が減少? 「勝負の世界なので仕方ないが…」将棋連盟元理事が複雑な胸中を語る
“買い物はあまりしない”
昨年5月、藤井九段と「100万を自由に使えたら」をテーマに対談したことのある「ひふみ投資シリーズ」のファンドマネージャー・藤野英人氏が言う。
「印象的だったのは、藤井さんは普段あまり買い物をしないので“自販機で飲み物を買った時はぜいたくだと思う”と語っていたことですね。100万円があったら将棋用のパソコンを作るかもしれないとも話していて、将棋に没入する神様のようだと思った。とはいえ、藤井さんは今後どんどんお金を使う人物になるでしょう。将棋の普及や後進育成のために、AIやアプリなどの開発や教室の運営に手を伸ばす意欲を感じました。その時には、私自身も応援の意味で協力したいですね」
ちなみにレジェンド羽生九段の生涯賞金・対局料獲得額は、前述したランキングを合算しただけでも優に30億円ともいわれている。
「自ずとほかの棋士の取り分は減る」
羽生九段と比べれば、藤井の累計額は未だ3億円強といったところだが、なにせプロ野球などの世界と違って棋士の現役生活は長い。今後も“藤井一強”が続けば、獲得額でも金字塔を打ち立てることになるのではないか。
「実力が拮抗している群雄割拠の時代なら、1位の棋士の収入もそれほど多くないけれど、藤井がタイトルを独り占めしてしまえば、自ずと他の棋士の取り分は減るでしょう」
そう指摘するのは、日本将棋連盟元理事で、雑誌「将棋世界」編集長も務めた田丸昇九段である。
「勝負の世界だから強い者とそうでない者の差が広がるのは仕方ありませんが、以前ならベスト30あたりが年収1千万円を狙える目安となるところ、今後は20位に入ってないと難しくなるかもしれません。タイトル戦を主催する新聞社などスポンサーの経営状態も厳しいようですから、賞金などの水準も今のままとはいかなくなる可能性もあります。藤井の独走を止めない限り、自身の実入りが減って危機感を覚える棋士が出てくるのでは」
さらなる藤井時代の到来で棋界はどう変わるのか。
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