「米国は対外的な危機があれば1つにまとまる」は過去の話…中東情勢緊迫化で国内は大混乱の悪夢が
個人消費の息切れ、続くスト…経済にも赤信号
「対外的な危機があれば、米国は1つにまとまる」と言われてきたが、現在の混迷ぶりを見るにつけ、「この神話は幻になってしまったのではないか」と思えてならない。
折悪しく、米国経済に赤信号が灯りつつある。
米国の年末商戦は国内総生産(GDP)の7割を占める個人消費のピークだが、それを前にして息切れ懸念が強まっている。市場関係者が注目したのは、米通販大手アマゾン・ドット・コムが10~11日に開催した秋のセールで、単価が前年比4%も下がったことだった(10月14日付日本経済新聞)。コロナ禍で積み上がった余剰分の貯蓄が消失しかけており、個人消費に暗い影を投げかけているからだと言われている。
米国ではこのところ、労働組合によるストライキが目立つようになっている。被雇用者数に占める労働組合員の割合は今や10%に過ぎないが、スト実施のおかげで高い賃上げを勝ち取る例が増えており、労組の活動が再び盛んになる可能性が指摘されている。
10月12日付の日本経済新聞は、今回のストの根底には過去に起きた運動と同じ要求があるという見方を伝えている。2011年の「『ウォール街を占拠せよ』運動」が求めた格差是正だ。全米自動車労組(UAW)のショーン・フェイン会長は、今回実施しているストを「ただの賃上げ闘争ではなく、ビリオネア(億万長者)と労働者の階層闘争」としている。
現在の米国は中世に逆戻りしたのか?
米国のインフレ率は3%台と沈静化しつつあると言われているが、大多数の米国人が物価高にいらだっている状況に変わりはない。
筆者は米国小売店における窃盗被害の深刻化を指摘し続けている。全米小売業協会は9月26日、主要都市で小売業者を狙った組織犯罪が急増している事実と、昨年の被害額が1121億ドル(約16兆8000億円)に達したことを明らかにした。
国家機能が弱かった中世の時代、略奪行為は富を稼ぐ1つの経済行為とみなされていた。この観点から見れば「現在の米国は中世に逆戻りした」と言っても過言ではない。
米国では内戦勃発が懸念されるようになって久しい。「我々は革命の真っ只中にあり、今後12カ月が歴史上最も爆発的な状況になる可能性が高い」との警告を発する歴史家まで登場している(10月3日付ZeroHedge)。
にわかに信じがたい主張だが、ワシントンの政治エリートたちが国民の怒りに気づいていないのは確かだ。中東情勢が緊迫しても一向に改善しない米国政治の機能不全が、米国社会に大混乱をもたらさないことを祈るばかりである。
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