なぜ中日・高橋周平(29)はFA権を保持してもトレード要員なのか? 知られざる契約と、臨時コーチ時代に「見限った」立浪監督の冷遇
トレードの障壁になった高橋周の契約
プロ野球中日の高橋周平(29)が今オフもトレード要員に挙がっている。昨季は国内フリーエージェント(FA)権、今季は海外FA権の資格条件を相次いで満たした。本来なら選手側が所属先を選択するイニシアチブを持つのだが……。
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複数の球界関係者に取材を進めると、意外な事実が判明した。
話は昨オフにさかのぼる。立浪監督は阿部寿樹(現楽天)、京田陽太(現DeNA)と主力内野手を立て続けにトレードで放出した。自身が薫陶を受けた故星野仙一監督を彷彿させる血の入れ替えだった。
この時、特に阿部のケースで高橋周もトレード要員に名を連ねていたという。2012年に東海大甲府高(山梨)からドラフト1位で入団。攻守に優れた内野手として将来を嘱望されながらも、なかなか絶対的な主力選手になり切れないでいた。
在京セ・リーグ球団の編成担当が昨オフのトレードの舞台裏を、こう解説する。
「石川(昂弥)が昨季は膝の手術で途中から長期離脱となったが、今季早々に戻ってくることは分かっていた。立浪監督の構想ではあくまでレギュラー三塁手は石川。となると、阿部、高橋周は二塁でポジションを争うことになる。ドラフト会議では既にトレードを見据え、内野手を複数確保していた。阿部、高橋周でだぶつく可能性があった中で、出しやすい阿部の方を選んだようだ」
「出しやすい」とはどういうことか。
同編成担当が続ける。
「高橋は24年まで複数年契約を結んでいると聞いた。年俸は高額ではないとはいえ、昨オフの時点では、まだ2年の契約が残っていた。トレードが成立しづらい選手であったことは確かだと思う」
昨年11月15日に阿部、同18日には京田のトレードが相次いで発表された。高橋周は直後の同23日に10%減の推定年俸6750万円で今季の契約を更改した。トレードの直後に“残留”が正式決定した形だった。
トレード期限前の品評会?
さる中日OBが述懐する。
「立浪監督と京田とのこと(昨季試合中に無気力を理由に2軍へ強制送還)は有名だが、阿部も監督とはソリが合わなかった。高橋周はこの点で阿部や京田よりはトレード要員としての優先順位が低かったこと、そして自分の就任前から複数年契約していたこととで、いわば消去法での残留となった」
立浪監督は中日の臨時コーチを務めた21年の春季キャンプで、前年に打率3割をクリアするなどした高橋周については選手としての伸びしろが少ないとみていることを周囲に明かしていたという。自身と同じ背番号3を付ける選手に対しては自然と求めるものが高くなったのか、いずれにしても高橋周への評価は就任時から低かったようだ。
こうした経緯があったため、今季に入っても高橋周にはトレードの火種が燻っていた。
4月半ば、石川が1軍復帰を果たす。高橋周はなかなか出番を得られず、5月に至っては8打席しか立てなかった。
ところが一転、6月は41打席と大幅に増えた。この起用の変化に、前出の中日OBは立浪監督の思惑を読み取っていた。
「(7月末の)トレード期限を前に、他球団に戦力として使えることをアピールすることを狙ったのではないか。今年は、巨人からロッテにトレードされた石川(慎吾)が夏場を前に出番を与えられたように、球界ではよくあること。一時期、急に出場機会を得た高橋周も、そういうことなんだろうなと思った。球団もそこそこ年俸が高い高橋周は放出やむなしのスタンスでいるのではないか。立浪監督は比較的高い年俸の選手を放出することで、一部の球団幹部の評価を高めていると聞くので、ドラ1の高橋周のトレードも辞さないという方針は現場と球団で一致しているように見える」
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