「師匠の無法と戦う姿に心を打たれた」 師匠を訴えて破門された吉原馬雀を受け入れた吉原朝馬が語る決意「彼のような若者が二度と出てこないように」

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“寄席に出られなくなる”と言われたり…

 他の一門や師匠に破門された前座や二つ目を弟子に取れば、相手との間に要らぬあつれきが生じることもある世界。その点、朝馬は圓歌に電話で経緯を伝えたという。

「彼を弟子にするとお伝えしたら“よろしくお願いします”と言われましたが、馬雀を引き取ることを明らかにしたら、周囲から“協会からにらまれる”とか“干されるぞ”“寄席に出られなくなる”などと言われたり。でも、師匠であっても弟子から落語を取り上げたり、“人質”に取るような嫌がらせは許されません。受けた仕打ちは、トラウマとして残ります。ですから、彼のような若者が二度と出てこないよう、落語界にはこの問題の総括と将来的な対策の徹底をお願いしているところです」

5人の後輩に抜かれたが…

 晴れて落語家として再出発だが、一連の騒動で貴重な時間が失われたのも事実。序列を表す香盤では、5人の後輩に抜かれたそうだ。

「まだ東京地裁で判決が出ていないことと、前の師匠が落語協会に破門届を提出した後の約8カ月の間、僕が移籍をしなかったことが理由だと思います。合理性のある判断だと受け止めていますよ」

 真打昇進は遅れるが、

「真打に求められるのは、一層の稽古と実績を積むこと。それに人間性です。昇進したら、朝馬師匠に口上であいさつしてほしいですし、落語と向き合う意識は以前にもまして旺盛かつ前向きですよ」

 今月20日には東京・浅草の東洋館で、馬雀の復活を祝う落語会〈おかえり馬雀さん〉が開催される。

「朝馬は“笑いに飢えての再出発。たまったマグマが噴出します”と期待を寄せています。馬雀は“モチベーションも上がって高座が楽しい”とうれしそう。会では自作の新作『居場所』を披露する予定で“バカバカしい噺ではありますが、いまの自分と結びつく感じ”とも」(落語担当記者)

 入門から14年。苦労の末に“居場所”を手にした落語家を巡る人情噺――。

週刊新潮 2023年10月19日号掲載

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