「最後はど真ん中に投げ込む度胸があるかどうか…」阿部新監督が若手投手に語った真意とは【柴田勲のセブンアイズ】

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好調な広島

 広島は連勝で乗っている。確かに地の利や運があったが、短期決戦、しかも最長で3連戦の超短期決戦で最も大事なワンチャンスを確実にモノにする野球ができていた。

 15日の第2戦、8回裏の攻撃。菊池涼介の安打と野間峻祥の内野安打で無死一、二塁となった。

 ここで3番の西川龍馬が初球で送りバントを決めると、上茶谷大河の三塁送球が野選となって満塁、ここで代打・田中広輔が初球を勝ち越しのタイムリー、さらに秋山翔吾の犠飛で加点した。

 前日の14日も1点を追った8回に羽月隆太郎が三盗を決めると菊池がスクイズを成功させた。2試合を通してバントの徹底とお家芸の足攻が生きていた。

 この三盗が効いた。流れは広島に傾き秋山のサヨナラ打を呼んだ。

 対照的にDeNAは15日の8回表無死一塁で大田泰示に送りバントを命じて2度失敗して三振に終わった。シーズン中は一度もやったことがないという。なぜ大田に代打を出さなかったのか。負けたら終わり、確実にモノにする必要があった。

 投手起用にしても広島は第1戦で先発の床田寛樹の後から6投手を繰り出し、第2戦では島内颯太郎と栗林良吏が好リレーを見せた。

 広島はワッショイだけではなくチーム一丸で戦い、中継ぎ陣も好調だ。

 広島とDeNAでは、広島のなんとしてでも勝ち上がるという執念が上回っていた。最終ステージは初戦をどちらが取るかだ。もし広島が勝つようなら私の予想も雲行きが怪しくなるかもしれない。

阿部新監督に伝えたこと

 阿部慎之助新監督が指揮を執る巨人の秋季練習がスタートした。報道によると、阿部監督は畠世周、横川凱に対して「ど真ん中に投げ込む度胸があるかどうか。最後はそういうところ」と話したという。

 オッ、やっているなと思った。実は阿部監督と直接電話で話をした。人づてでは真意が伝わらないことがある。要は今コラムでも何度か強調しているが「基本を大切にしてほしい」と伝えたのだ。

 新監督は「よくわかっています。(選手に)意識させます」と話した。

 投手なら生命線は外角低めのストレートである。これがあってこそ変化球が生きる。困ったら外角低めだ。だが、なかなかそこに行かない、投げられない。

 ならばど真ん中に投げなさい。四球を出すくらいなら打たれてこい。だが、打たれても野手の正面を突くかもしれないし、ファウルになるかもしれない。運次第だ。

 今季の巨人はリーグ5位の与四球401、四球から失点するケースをどれだけ見てきたことか。苦しくなっても、「打てるものなら打ってみろ」。強い気持ちを持ち、四球は出すなということだ。

 就任記者会見の前であまり時間がなかったが、阿部新監督は私の「大変だが頑張ってほしい」の言葉にも力強く応じてくれた。やってくれると信じている。

 さあ、阪神対広島の最終ステージの結果がどうなるか。大いに注目したい。

柴田 勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会理事を務める。

デイリー新潮編集部

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