【ブギウギ】女優・趣里の原点は4歳で始めたバレエにあり 3つの出演作で検証する実力と魅力

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各所で絶賛された「生きてるだけで、愛。」

 2018年11月公開の映画「生きてるだけで、愛。」は、現時点で趣里の代表作ともいえる作品だ。演じたのは、うつによる過眠症のせいでアルバイトも満足に続かず、引きこもり気味で感情の起伏が激しい主人公・寧子である。

 寧子は恋人の津奈木(菅田将暉)と同棲している。何をやってもうまくいかず、感情をコントロールできないことに嫌気がさし、津奈木に理不尽な怒りをぶつけ続ける。この躁うつ病に苦しむ演技が各所で絶賛された。

 表情、体型、雰囲気など全てで表現する趣里の演技は、引き込まれてしまうほど生々しく、素晴らしかった。なかでも必見は、寧子が温水洗浄便座について喋りまくる場面だ。周囲と自分の間の温度差、自分の発言が理解されない絶望感をうまく表現し、強烈なインパクトを残している。

 彼女が寧子に感情移入できたからこそ生まれた演技だが、バレエで挫折した経験も関係しているのではないだろうか。それゆえに彼女は、寧子を単なる“嫌な女”として演じていない。

 劇中で大胆に肌を見せたことでも話題になったが、そこに彼女の演技の本質はない。ガラスのようにもろい心を持つヒロインを多彩な表情で熱演したことが評価され、第33回高崎映画祭の最優秀主演女優賞、第42回日本アカデミー賞の新人俳優賞、おおさかシネマフェスティバル2019の主演女優賞を受賞した。

 趣里は“役者スイッチ”が入った途端、そのキャラクターが乗り移ったかのような演技を見せる“憑依型女優”といえる。今回の「ブギウギ」でもその唯一無二の演技力で、戦後の大スター・笠置シヅ子を現代に甦らせてくれるだろう。

上杉純也

デイリー新潮編集部

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