本当は怖い「サウナで整う」の正体 特に注意が必要な人は? 医師が語る実体験「数秒間、脈が止まって“ヤバい”と」

ドクター新潮 ライフ

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体の声を聞く

 しかも入り方も異なるという。

「サウナ浴と冷浴を交互にくり返す温冷交代浴をする人は見かけません。サウナ浴の後、シャワーで真水を浴びたり、湖や海に入って体を冷やす人はいます」

 こばやしさんは今年5月、フィンランド人で、サウナ普及に携わるカリタ・ハルユ氏の著作を、日本人向けに再編集・翻訳した『究極の「サウナフルネス」世界最高の教科書』(東洋経済新報社)を出版した。同書で「温冷交代浴の健康への影響や、温度ごとの影響の違いは、現代の医学ではまだ検証不十分」「サウナ浴の熱刺激と冷浴の冷刺激それ自体は、極端な温度差を求めずとも身体にプラスの効果をもたらす」と指摘している。

 どんな入り方をすれば健康効果を発揮できるのか。

「自分のペースで入りましょうとしか言えません。フィンランドのサウナ室に時計はなく、何分間たつまで出ないと我慢する人もいないのです。体の声を聞いて決めればいいんです」

「鳴かぬなら鳴くまで待とう時鳥」は260年続く江戸幕府を開いた天下人を評価して、後世の人間が勝手に作った句に過ぎない。当の徳川家康の発言として記録されているのは「及ばざるは過ぎたるより勝れり」だ。偉人は過剰を戒め、ほどほどを勧めたのである。

緑 慎也(みどりしんや)
科学ジャーナリスト。1976年大阪府生まれ。出版社勤務後にフリーとなり、科学技術等をテーマに取材・執筆活動を行う。著書に『13歳からのサイエンス』(ポプラ新書)、『認知症の新しい常識』(新潮新書)、『山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた』(共著、講談社)など。

週刊新潮 2023年10月12日号掲載

特別読物「体に良いのか悪いのか 『サウナ』空前ブームに潜む“命の危機” 本当は怖い『整う』の正体」より

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