本当は怖い「サウナで整う」の正体 特に注意が必要な人は? 医師が語る実体験「数秒間、脈が止まって“ヤバい”と」

ドクター新潮 ライフ

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数秒間、脈が止まり…

 坪川氏は水風呂に入るとき、必ず自分の手首に指の腹を当て心拍数を測るようにしているという。

「血管迷走神経反射が怖いからです。全身を水に浸すと、副交感神経の一つである迷走神経が活発化して心拍数が急激に低下することがあります。最悪の場合、そのまま脳へ十分な血液が届かず、失神して溺れる可能性もある。特に注意が必要なのは元々心拍数が少ない人です。私もその一人で、脈を測りながら水風呂に入っていると、数秒間、脈が止まっていて『ヤバい』と思って出たことが何度かあります」

 危険信号を察知するには普段から自分の体の状態を把握しておく必要があるのだ。

 前出の前田氏は「刺激を求める入り方」にも注意すべきだという。

「温泉でも42度を超える熱いお湯を好む方が昔からいらっしゃいます。同様にサウナでもとにかく熱いのがいいと100度前後の超高温サウナを好む方がいますが、危険です。体の体温調節機能に負担がかかりますし、万が一、脱水で倒れるなどすると、体温が39度以上に上がる場合もあるでしょう」

フィンランドのサウナは「湿度が高く、温度が低い」

 ここまでサウナや水風呂に潜むリスクについてあれこれ検討してきた。サウナ愛好家の中には、サウナや水風呂にはリスクどころか、数々の健康効果があることが疫学調査により実証されているはずだと仰る方もいるだろう。たしかにサウナには心臓病、脳卒中、高血圧のリスクを下げる効果があるとする、ここまで述べてきた危険性とは相反する論文が存在する。だが、注意を要するのは健康効果を示す論文の大半がサウナの本場フィンランド発である点、そして同国のサウナは日本式とは異なる点である。

 フィンランド在住のサウナ文化研究家こばやしあやなさんは、日本でサウナを体験したフィンランド人からしばしば「なんであんなに高温でカラカラなのか」と聞かれるという。

「日本では80~100度のドライサウナが主流です。一方、フィンランドのサウナは、ストーブの焼け石に時々水をかける(ロウリュ)ので湿度は高めです。温度は60~80度。入った瞬間に熱いと感じることもないので、20分以上入り続ける人もいます。もっと高温のサウナを好む地域もありますが、おおむね日本式よりは低温です」

 違いはサウナ室の温度だけではない。

「フィンランドで日本にあるような人工的な水風呂を目にすることはありません。冷浴できる場所があるとすれば、湖や海など水辺に隣接する個人所有のコテージサウナやサウナ施設です」

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