本当は怖い「サウナで整う」の正体 特に注意が必要な人は? 医師が語る実体験「数秒間、脈が止まって“ヤバい”と」

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注意すべき人は?

 サウナに入ると、体に何が起こるのか。

「高温の環境では血管が拡張します。血管にコイル状に巻き付いている平滑筋が緩むからです」

 と解説するのは、心臓血管外科医で、2010年から毎年日本のベストドクターに選出されているニューハート・ワタナベ国際病院院長の渡邊剛氏だ。血管が広がれば血の巡りは良くなる。だが、リスクもある。

「その一つは血圧の低下です。血管が膨らむと血液を流すのに必要な力が減って血圧が下がります。特に注意すべきなのは元々低血圧の人や血管を広げる作用のある降圧剤を飲んでいる人。血圧が下がりすぎると、常に大量の血液を必要とする心臓や脳へ必要な酸素を送ることができません」

血液はどんどんドロドロに

 サウナ中に立ち上がったときにふらついて救急要請に至った先の事例も、低血圧で脳の酸欠状態が引き起こされたのかもしれない。

「血管内脱水も要注意です。サウナで発汗すると血液から水分が失われる。水分が減っても赤血球、血小板、脂肪など水分以外の成分は血管から出ていきません。だから水分補給せずにサウナに出たり入ったりをくり返すと血液はどんどんドロドロになっていきます。血栓ができたり、血管の狭い部分を血液が通りにくくなったりすれば、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクが高まります。利尿作用のあるビールなどサウナ後のアルコールにも注意が必要です」

 危険が潜むのはサウナだけではない。その後の水風呂も油断禁物だ。

「今度は平滑筋が締まって、血管が狭くなります。その分、血液を流すのに大きな力が必要ですから、血圧は高くなりがちです。元々高血圧の人、心臓に疾患のある人、動脈硬化で血管が硬くなっている人は、血管が血栓で詰まったり破れたりして、脳卒中や心筋梗塞を起こすかもしれません」

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