「行動変容」を促す治療アプリで医療を変える――佐竹晃太(CureApp代表取締役社長・医師)【佐藤優の頂上対決】

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高い継続率

佐藤 千里さんは、「ラーメン2杯も食べたらダメでしょう」と叱ったりもするのですか。

佐竹 いや、叱りはしないですね(笑)。

佐藤 私は以前透析をしていて、6月に腎臓移植手術を受けたのですが、手術に当たって痩せなければならなかったんですね。それで腎臓内科が管理栄養士を紹介してくれたのですが、彼女が痩せさせる名人でした。月に1度通いましたが、基本的に人を褒めるんです。それによって現実から逃げさせない。アプリは彼女の役割を果たしているわけですね。

佐竹 アプリが単体で治療するわけではなく、医師が見守ってくれることも大きいですね。アプリに記録された内容について、医師とのやりとりがあるのが治療アプリを使ったスマート療法のポイントです。

佐藤 医師はどのくらいの頻度で見るのですか。

佐竹 大体月に1回診察をするタイミングで、その間の変化を患者さんと一緒に見ます。そして頑張ったじゃないかとか、次はこれをやろうとか、話しながら治療を進めます。

佐藤 患者さんの反応はどうですか。

佐竹 これは医師も私たちも想定していなかったのですが、アプリを処方した方は次の診察で、自分がどれだけ生活習慣を改善できたか、生き生きと語り出すんです。これまでの高血圧の治療では、降圧剤の薬を出し、また来てもらうだけで診療が無機質なものになってしまうことも多かったのではないかと思います。会話も「変わりませんよね、また来てください」と言うくらいで。

佐藤 高血圧に限らず、薬のやりとりだけという治療は多いです。

佐竹 それが治療アプリを処方すると、患者さんからどんどん話しかけてくる。アプリがラポール(信頼関係)を築くきっかけになっているのです。

佐藤 大きな病院だと、1時間待って診察5分ですから、その中ではなかなか信頼関係は築けない。

佐竹 担当の医師と合う、合わないということもあります。でも治療アプリを使ったスマート療法だと、まず客観的な情報が入ってくるので、自分自身でそしゃくするんですね。それからどうするかを考える。だから話すことが出てくる。こうしたプロセスがあるのも、デジタルならではの価値かもしれません。

佐藤 継続率はどのくらいですか。

佐竹 数字は公表していませんが、非常に高いです。薬事承認のための治験では、6カ月間、毎日使い続けた方は9割でした。

佐藤 それは非常に高いですね。

佐竹 ヘルス系アプリ、ダイエット系アプリは低いものも多いようですね。1カ月使い続けられる方は、数%しかいないというデータもあります。だから治療アプリも低いんじゃないかと思われている方が多い。でも、まったく違います。やはり病院で医師が処方して、保険適用されているという信頼感があるのだと思います。

佐藤 その点は薬と同じですからね。

佐竹 薬との比較でいえば、いま服薬コンプライアンス(医師の処方した医薬品を患者が用法、用量を遵守して服用すること)は、50%ほどだといわれています。つまり出した薬を半分の人しか飲んでいない。アプリはそれより圧倒的に高い継続率を持っています。

佐藤 薬は無駄になっているものが相当にあるのですね。

佐竹 はい。医療費は増大しています。医療リソースの効率的な使い方という観点からしても、治療アプリは素晴らしいソリューションだなと思います。

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