仲良し友人夫婦の付き合いが、一転、不倫劇に… 42歳夫だけが知らなかった彼らの面倒な過去
20年経って吹き出した
その後、芽衣さんは思い切って雅和さんの実家に乗り込んでいった。今さら何を言うかと言われながらも、味方になってくれた雅和さんのいとこと一緒に夫婦を施設に預けた。
「お金はある家だったようです。芽衣さんは息子を家から独立させ、自身が保証人となって部屋を借りた。本当は東京につれてきたかったけど、大学があるからって。卒業したら東京で就職するようにアドバイスしたそうです」
すべて片がついたのは昨年秋だったが、それまでに芽衣さんは何度も心が萎えそうになったり、将史さんが冷たいと泣いたりした。そのたびに秀太朗さんは話を聞いて励ました。妻の静佳さんは、芽衣さんの深い心情を理解しようとはしなかった。おそらく、静佳さんは雅和さんを好きだったのだろうと芽衣さんは言った。
「当時の仲良し4人組にはさまざまな感情が入り乱れていたんでしょうね。まだ若かったから、気持ちをうまく伝えたり察したりということもできず、みんながいろいろな気持ちを必死に隠していたのかもしれない。それが20年たってから一気に吹きだしたように見えました」
うまく立ち回るはずが…
秀太朗さんは自分の役割をわかっていたはずだった。妻と、芽衣さん夫婦の間に大きな亀裂を生まないようにうまく立ち回るはずだった。大人なのだからそれができると思っていたのだ。
「だけどちょうど1年くらい前、芽衣さんと関係を持ってしまった。彼女があまりに落ち込んで疲れていた日があって。誰にも聞かれないところで話したいと言うのでホテルをとって……。抱きしめてほしいと言われたときは、まずいなと思いましたが、拒絶はできなかった。折れそうに細い彼女を抱きしめているうちに、つい……」
静佳さんはすぐに気づいたようだ。怪しいとつぶやいたことがある。だが、芽衣さんの名前は出さなかった。静佳さん自身、認めたくない、知りたくない気持ちが強かったに違いない。
「でも先日、遅く帰宅したら妻がテーブルに突っ伏していたんです。どうしたの、大丈夫と言ったら顔を上げたんだけど泣いていました。『つらいの。わかるでしょ』って。自分が何をやっているのかはわかっています。ごめん、と言うしかなかった。『恋愛しているわけじゃないんだ』と言うと、『だからよけい嫌なの』と。恋愛だったらやむを得ないけど、妙な同情から体の関係をもつなんて意味がわからないそうです。体の関係はないと言い張りましたが、妻は『そんな嘘はつかなくていい』と悲しそうに言いました。あのときは抱きしめるしか方法がなかったし、僕は、人間って、抱き合うことでしか生きられない時期もあるような気がしているんですが、もちろん、そんなことは妻には言えない。放っておけないから関係をもってしまうこともあるし、そこから情がもつれていくこともある。そういうのは、“好き”という感情より、もっとやっかいかもしれませんね」
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