横浜のドヤ街で“1万2000人”の顔を覚えた「伝説の刑事」が逝去 指名手配犯を“年間30人”も逮捕できた驚くべき理由

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「オレに札が出てると思うんだけど」

 地元の神奈川県警はもちろん、沖縄県警の刑事が西さんを頼ってきたこともあったそうだ。驚くべきエピソードはそれだけに留まらない。

「私と西さんが車に乗っていたところ、ある男がコンコンと窓を叩くんですね。西さんが応じると男はこう言いました。“オレにフダ(逮捕状)が出てると思うんですけど、西村さん、何か聞いてませんか?”。つまり、自分に逮捕状が出ているかを刑事である西さんに尋ねてきた。事件を起こして逃げ続けるつもりなら、わざわざ刑事に確認するはずがありません。これはほとんど出頭したようなもので、しかも、“どうせ捕まるなら西さんに捕まりたい”、と。ドヤ街に逃げ込んだ犯罪者は、常に逮捕の恐怖と隣り合わせです。気を張りながらビクビクと生活している。そんな時、彼らは“西さんだったら話してもいいか”と考えるんですね。しかも、そうして逮捕された連中の多くは、懲役を終えると寿町に戻ってくる。そして、西さんを訪ねて“今回はすみませんでした”と頭を下げるわけです」

 ドヤ街に生きた伝説の刑事――。その戒名には“寿”の一字が刻まれていたという。

デイリー新潮編集部

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