「小学生に英語授業」は間違っている? 学力テストで英語の成績は低下、「話す技能」は6割以上が0点

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「英語が分からない」「英語嫌い」な子どもが増加

 こんな無理を続けていたら潰れてしまう子どもが必ず出てくると危惧した通り、「話す」技能では「6割以上が0点」です。とりわけ書く力が未熟な小学生が、600~700の英単語を覚えるのはとても難しい。どんな中学生だって、覚えるべき英単語がいきなり2倍になった教科書が目の前に現れたら尻込みしてしまうのは当然の話です。

 現に4年前の調査で、「英語の授業内容はよく分かります」と答えた中学3年生は64.4%、「英語の勉強は好きです」との回答は52.3%、「将来、積極的に英語を使うような生活をしたり職業に就いたりしたい」と答えたのは37.2%でしたが、今回の調査ではそれぞれ4年前より2ポイント、4ポイント、5ポイントも減っています。ノルマを重くした結果、政府・文科省は「英語が分からない」「英語嫌い」という子どもを増やしてしまったのです。

 なぜ日本の英語教育はこんなことになってしまったのでしょうか。どうすればいいのでしょうか。次回では、明治以来140年の歴史を踏まえた「最終結論」をお話ししたいと思います。

 なお、冒頭で紹介した「魔女の宅急便」の会話の、英語圏の人向けの適切な英訳は「魔女」が「princess」で、「うん」は「Oh, I love you, dad!」。これが、AIにはできない異文化理解に基づいた英語力です。そして異言語を学ぶ神髄といえるのではないでしょうか。少なくとも、英語嫌いになってしまっては「魔女」を「princess」と訳すことはできません。

江利川春雄(えりかわはるお)
和歌山大学名誉教授。1956年生まれ。大阪市立大学経済学部卒業、神戸大学大学院教育学研究科修士課程修了。広島大学で博士(教育学)取得。専攻は英語教育学・英語教育史。『英語と日本人』『英語教育論争史』『受験英語と日本人』等、著書多数。

週刊新潮 2023年10月12日号掲載

特別読物「『学問の秋』に日本の未来を考える 学力テストで『英語力』が低下 小学生に『英語授業』は誤っている」より

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