「小学生に英語授業」は間違っている? 学力テストで英語の成績は低下、「話す技能」は6割以上が0点

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「英語嫌い」を増やす恐れも

“誤訳”が生まれる理由、それは、あらゆる言語は単なる記号ではなく、それぞれが異なる文化を背負っているからです。この異文化理解、「魔女の宅急便」の話でいえば“魔女”に対する歴史的・宗教的な理解なくして、真の意味での異言語間コミュニケーションは成り立ちません。その大前提として、英語であれば英語に興味を持ち、英語圏の文化を理解したいという思いが欠かせないはずです。

 では、いまの日本の英語教育はどうでしょうか。「グローバル人材」なるものを求める財界や、彼らの後押しも受けた政治家は「使える英語」を身に付けさせようと、小学校からの英語授業を推進しています。ですが、小学生に週2時間程度の英語を教えても、英語を学ばなかった子との差は中学生になるとなくなってしまいます。まして異文化理解が深まる年齢ではありません。それどころか、むしろ表層的に英単語を教え込むことで、「英語嫌い」を増やしてしまう恐れがあります。

 母語(日本語)でさえ「文化」という抽象的な概念を理解できない小学生が、英語の「culture」を理解できるはずもありません。小学生に「ハワーユー? アイムファイン、センキュー」なんて教えたところで、そこから異文化への敬意が生まれるわけがない。意味も分からず英語の口まねをさせられるのは苦痛でしかないでしょう。

 したがって、小学生への週に1~2時間の英語授業は、じょうろで砂漠に水をまいているに等しく、壮大な無駄です。財界や政治家は、異言語間の「コミュニケーション」というものをナメていると指弾されても仕方がないでしょう。

学力テストの悲惨な結果

 実際、小学校の英語を教科化した弊害は数字としても表れています。文科省の調査では、「英語の学習が好きではない」と答えた小学6年生の割合は、13年度は23.7%でしたが、教科化後の21年度は31.5%と、約8ポイントも増えています。

 今年の7月31日に発表された、文科省の国立教育政策研究所が問題を作成して行われた全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果もひどいものでした。4年ぶりの実施となった中学3年生の「英語4技能」の平均正答率は以下の通りです。なお、カッコ内は4年前の結果です。

・聞く58.9%(68.3%)

・読む51.7%(56.2%)

・書く24.1%(46.4%)

・話す12.4%(30.8%)

 単純な比較はできませんが、いずれも前回より下がっています。これが企業の業績だったら、確実に倒産の危機を迎える惨状です。

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