ロケの達人、千鳥「大悟」の秘密 世にも珍しい“ヤギファースト”の番組で見せる人間性とは

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ヤギが寝てしまったらロケ終了

 千鳥の勢いが止まらない。2012年に大阪から東京に出てきた頃は、持ち味を出し切れずに苦戦していたが、実力が認められて徐々に仕事が増えていき、今では押しも押されもしない人気芸人の仲間入りを果たした。2023年7月にはかまいたち、ダイアンと共にフジテレビ「FNS27時間テレビ」で総合司会を務めた。

 千鳥の2人がレギュラー番組に出演する際、進行役を務めるのはツッコミ担当のノブである。ノブの粘り気のある岡山弁のツッコミと、「クセがすごい」に代表されるような独特のワードセンスは印象に残る。それが千鳥の代名詞のようになっているところもある。

 しかし、最近では、ボケ担当の大悟の発想の面白さや、人間的魅力の部分が評価されるようになっている。大悟のそういう要素が存分に生かされているのがテレビ東京の「ヤギと大悟」(金曜午後7時25分)である。

 タイトルが示す通り、番組の主役となるのは、タンポポ(通称:ポポ)という名前のヤギと千鳥の大悟。ヤギを引き連れた大悟が、地方の町を歩き、地元の人々と触れ合いながら、ヤギに雑草を食べさせて人助けをする。

 人間に飼い慣らされた犬などと違って、ヤギはなかなか言うことを聞かない。でも、この番組ではポポちゃんを無理矢理動かそうとせずに、好きなようにさせる。草をたくさん食べて、眠くなって寝てしまったら、そこでロケは終わり。無理に予定していた企画をやらせたりはしない。世にも珍しい「ヤギファースト」のバラエティ番組なのだ。

大悟の圧倒的なコミュニケーション能力の高さ

 この番組の一般的な見どころは「ヤギを連れた大悟が地元の人々と触れ合う」という点にある。地方ロケにヤギという要素を加えることで、ロケ番組と動物番組の両方の面白さを出すことができる。

 でも、個人的には、この番組で一番興味深いと思ったのは大悟という人間の「圧倒的なコミュニケーション能力の高さ」だった。

 彼はどんな一般人にもほとんど敬語を使わずに、気軽に話しかける。でも、相手がそのことに不快感を示したり、嫌がる様子を見せたりすることはほとんどない。大悟は相手が年長者でも子供でも関係なく、一瞬にして懐に飛び込み、同じ目線で会話をする。

 相手がどう思っているかを素早く察知して、そこに合わせて話を広げたり、お願いをしたり、行動を促したりする。さらに言えば、大悟は共演するヤギに対しても同じだけの気配りをしている。そのすべてがさり気なく自然に行われている。

 コンビで活動しているときは相方のノブが仕切り役を担うため、大悟のそういう側面が表に出てくることはあまりない。でも、「ヤギと大悟」では、大悟の人間的な魅力の部分が際立っている。

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