作者がまさかの性加害 ソウル「慰安婦の聖地」で造形物があっさり撤去も“少女像”に立ちはだかる壁
李在明氏の像をめぐる活動
さて、そこで気になるのが、慰安婦問題の象徴ともされる、慰安婦像の現状だ。韓国では「平和の少女像」と呼ばれるこの像は、国内外に100体が設置されているが、近年、非難の声も高まっている。設置を推し進めてきた団体の不正疑惑が発覚したからだ。だがその一部は政治的目的がからんでいるだけに撤去や移転が決して容易でない。
例えば、城南市役所の広場にある慰安婦像はどうか。この設置には、背任や不正送金の疑惑で逮捕状が請求され、現政権に抗議するハンストを行った「共に民主党」の代表であり国会議員でもある李在明(イ・ジェミョン)氏がかかわっている。李氏は城南市長だった2014年に、市民団体と共同で慰安婦像の設置を推進した。 市民に開放された市役所前の空間の真ん中に慰安婦像を置くことに市民の意見は割れたが、李在明氏は聞く耳をもたなかった。
李氏は、2016年、当時の朴槿恵(パク・クネ)大統領が、日本政府との慰安婦関連協議を終えると、「韓日の屈辱的な交渉によって政府が(各地の)平和の少女像を撤去した場合は、その少女像を城南市に送るよう要請する」と発言している。また、シドニーで行われた慰安婦像の除幕式にも出席し、2020年にはベルリン市が慰安婦像を撤去する際、ドイツ側に撤去の撤回を促す書簡を送っている。こうした経緯があるだけに、城南市の像の撤去は容易ではない。
韓国内でもナーバスな慰安婦像
ほかにも、京畿道安山市の地下鉄4号線「サンノクス駅」の入り口に建てられた慰安婦像、京畿道南楊州市の繁華街にある慰安婦像で、設置に当たっては当時の政治状況が後押しした。どちらも長期間に渡り、左翼政党が市長職や地域の国会議員の多数を占めてきたエリアだ。城南市と安山市、南楊州市は昨年、保守与党「国民の力」所属の市長になった。慰安婦像に批判的な市民の声を反映しているのは間違いないが、「記憶の地」の林氏の性犯罪のような大義名分がない限り、その地域性から撤去・移転させる可能性は低いといわれる。
慰安婦像は韓国社会でもナーバスな問題だ。撤去や移転の話になると、左翼野党の「共に民主党」所属の国会議員と左翼寄りの市民団体の激しい反発が予想される。慰安婦の撤去・移転を推進すると、親日派または売国奴という烙印を押され、左翼政党から政治的に利用されてしまう可能性すらある。与党「国民の力」の支持率にも悪影響を及ぼしかねない。慰安婦像は今後、親日派と反日派の争点になるともいわれている。