なぜ信長役に世界的バレエダンサー・ルジマトフが? 黒澤明作品が好きで「侍の資質を表現したい」

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毎日のトレーニングと数時間の読書

 ルジマトフは還暦を迎えたばかり。40代で現役を退くダンサーが多いクラシックバレエ界では、極めてまれな伝説的存在だ。

「年齢のことを意識したら、その時点で腰の曲がった老人です。毎日のレッスンを通じて、自身の情熱の炎を感じています。常に学び続けていたいのです」

 柔軟性と筋力を強化する毎日のトレーニングに加え、数時間の読書もメンタル面には欠かせないそうだ。

「バレエは自分自身を表現するもの。ダンサーは知識や経験、感情などを内に秘めている。それが豊富であればあるほど、観客に伝わるものも多いのです」

 母国・ロシアはウクライナへの軍事侵攻により、国際社会で厳しい批判にさらされている。中には、ロシアの芸術を批難する声も。

「文豪のトルストイやドストエフスキーに疑義を唱える人もいますが、文化を否定することは誰にもできません。政治家が死後に忘れ去られることはあっても、過去から現在、未来へと続く文化が滅びることはない。ロシアバレエも同様です」

 欧米と同様、日本もロシアに経済制裁を科している。一方で民間人の交流には制限がないことから、今回の来日公演が実現した。

「芸術は永遠であり、私は芸術こそが世界を救えると信じている。なぜなら、芸術は愚か者の私欲で揺らぐものではないからです」

 日ロが取り組む異色のコラボに注目が集まっている。

週刊新潮 2023年10月12日号掲載

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