「陸上部をやめ、復帰後にはビリ」 マラソン増田明美の知られざる学生生活とは(小林信也)
記録はハッピーな時に
「走ることへの考え方が180度変わったのは、オレゴン大に留学して、クラブに入ってからです(86年)。行って1週間後に、ルイーズ・オリベイラ・コーチに言われました。『アケミを見ていると辛くなる。よい結果ばかりを求めている。でもよい結果は、ハッピーだと思う時に生まれるものさ』。ショックでした。私ときたら、コーチに認めてもらいたい、1秒でも速く走りたい、そればかり考えていた。競技者が土台の私と、人間が土台のチームメートとの差を感じました。それが私の覚醒の時でした。
それからの2年間はすごく楽しかった。オフの日にはチームメートに天ぷらやおすしなどの日本食をふるまった。走ることへの向き合い方がすごく変わりました。選手である前に人であるって」
増田は後に“細かすぎる解説”で定評を得る。それは、レースの結果だけでなく、その選手がどんな人かを紹介したい、あの時の発見と通じている。
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