“NG記者リスト”が大炎上…「ジャニーズ」問題の本質は、日本のサラリーマン社会に蔓延する「自己保身と忖度」

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1年で930億円の経済損失

 私が初めて同誌の仕事をしたのは2001年8月末からのこと。広告会社出身だったことから、「数字がお得意でしょ?」と編集長に勝手に思われて未経験ながらフリーランスとして採用してもらった直後のことだ。当時のブロスの編集者は純文系タイプが多く、私のようにデータを使った仕事をできる者がいなかった。そんな私に課せられた6ページの特集が「SMAP解散シミュレーション」である。

 当時人気絶頂(というかずっと人気はあるが)だったSMAPだが、その5年前に森且行が脱退。メンバー同士の不仲説というものもメディア界では囁かれていた。そんな中、稲垣吾郎が2001年8月24日に道交法違反と公務執行妨害で現行犯逮捕されたのだ。これを受け、元々ジャニーズ事務所に対して好意的ではなかった編集長がこう言ってきた。

「中川さん、元々SMAP解散説ってのは時々取り沙汰されていたのですが、今回の件で現実味を帯びたかもしれません。結果がどうなるかは分かりませんが、もしもSMAPが解散した場合の経済効果、プラスでもマイナスでも構いませんがシミュレーションしてもらえますか? 中川さん、数字はお得意ですよね」

 当時ほぼ無職だった私は「もちろんできます」と言い、野村総研勤務の先輩に連絡をし、SMAPが解散した場合の経済効果のシミュレーションを開始した。「解散発表の翌日、全国50万人のOLがショックのあまり出勤できず、日当1万円とした場合、50億円の経済損失」といったものに加え、それまでのSMAP関連グッズやライブ、彼らが出演するCMによる販促効果などを推定しながら積み上げたら1年間で930億円の損失になるという結論になった。

当社としては一切許すことはできません

 当然これは厳密なものではないが、当時の吉野家の売り上げ並みのすさまじい額である。同特集では、SMAPのそれまでの歩みなどを振り返り、SMAPのことを大好きな女性漫画家にその魅力を語ってもらうとともに「SMAP解散の噂がなぜ出るのか?」を分析してもらった。そのうえで、このシミュレーションを作った。とりあえず、SMAPとジャニーズ事務所をケチョンケチョンに叩くものではない。しかし、事はそんなに簡単なものではなかったのである。

 私はこの特集のゲラを編集長の机の上に載せ、最終電車で家に帰った。そして翌朝9時頃会社へ行き、編集長からの返事があるかと思ったら、ゲラの上に一枚の手紙が置いてあった。机の上のゲラを見た役員によるものだった。そこにはこうあった。ちなみに同社はジャニタレが頻繁に表紙を飾る「TVガイド」の発行元でもある。

「〇君(編集長名)、あなたは我々の会社がジャニーズ事務所にここまでお世話になっているのを当然知っていると思いますが、なぜこのような『SMAPが解散したらどうなるか』という特集を作るのか。SMAPが解散するのを願っていると捉えられるし、ジャニーズ事務所を無駄に挑発します。このような企画は当社としては一切許すわけにはいきません。即座にボツにしなさい。なお、これに代わる企画では、911テロを揶揄するような企画をやってはいけません」

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