“NG記者リスト”が大炎上…「ジャニーズ」問題の本質は、日本のサラリーマン社会に蔓延する「自己保身と忖度」

国内 社会

  • ブックマーク

 ジャニーズの性加害問題をめぐり、メディアの「忖度」が次々と報じられている。10月2日に行われた東山紀之社長と井ノ原快彦副社長の会見では、質問されても当てない「NG記者リスト」をコンサルティング会社が作成し、事前に司会者がその記者の顔と名前を把握していたことが明らかになり、さらに炎上した。

ただの「お願い」だったかも知れないが

 さて、私(ネットニュース編集者・中川淳一郎)はジャニーズを巡る長年に亘る報道姿勢は、「小物サラリーマンによる自己保身と忖度の連続」だと考えている。過去にはジャニーズの汚点を報じず、今、風が吹いているとなると途端に勝ち馬に乗って「ボク達は正義の味方だよ~」とばかりにジャニーズを叩きまくる。

 これは呆れるばかりのメディアの風見鶏状況を表してはいるものの、当件はメディア特有の問題ではなく、日本社会のビジネス慣行における自己保身と忖度の象徴的なできごとではなかろうか。そこら辺を分析していくが、まずは私自身がこの26年間メディア・広告界に従事している中、経験した「ジャニーズ忖度」の実態について書いてみる。私は元々、ジャニーズ事務所批判記事を、東京新聞の「週刊 ネットで何が…」というネット上の騒動を報告する連載で書いていた。性加害問題ではないが、出版社による忖度を新聞紙面で報告していたのだ。

 基本線としては、ジャニーズ事務所が所属タレントの写真をドラマのHPで使わせないことや、ジャニタレ写真が表紙を飾る場合に写真をシルエット状にすること。さらにはジャニタレが出演する映画制作発表会等で撮影した写真をネットに載せないよう圧力をかけてきたことについてである。いや、ただの「お願い」だったかもしれないが、いつしか「ジャニタレ写真はネットに一切載せてはいけない」という空気感がウェブメディア界隈には漂った。

木村拓哉は「嫌いな男」上位に

 さて、今はジャニーズへの忖度が激減したから、以下のような記事もヘーゼンと出せるようになっている。メディアのお前らは自らをダサいと感じないのか? ジャーナリストごっこ連中が一斉に過去にスルーしていたことを反省することなく「勝ち馬に乗れ」的状況になっている。

「姑息な会見、テレビ局にも違和感 元プロデューサーが見るジャニーズ」(毎日新聞電子版・10月7日)
「ジャニーズ事務所に記者会見やり直し要請 当事者の会、リスト問題で」(朝日新聞デジタル・10月9日)
「『フェアです』ジャニーズ会見“NGリスト”手に司会した元NHK松本和也アナの『悲しい未来予想図』」(FRIDAYデジタル・10月9日)

 まず、私が編集者としてかかわっていた雑誌「TVブロス」はジャニーズのネタは滅多に出ず、出てもネガティブなものになりがちだった。マガジンハウス「an・an」の「好きな男嫌いな男」特集で木村拓哉が「好きな男」に15年連続1位になった。ブロスの場合は「an・an」に対抗し「ブロスが選ぶ好きな男嫌いな男」という特集を組み、関係者や読者らの投票で決めたが、木村拓哉は「嫌いな男」で上位に入った。容赦なくその号は発行したのである。そんな雑誌だが、忖度はあった。

次ページ:1年で930億円の経済損失

前へ 1 2 3 次へ

[1/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。