急遽日本で開催された世界相撲選手権 ウクライナチームが大躍進を遂げた理由とは

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ロシアでの開催予定が急遽日本に

「カマエテ! マッタナシ!」

 外国人行司の掛け声で、金髪の女子選手が立ち合いから激しくぶつかり合う。

 10月8日、東京都立川市の「アリーナ立川立飛」で行われた、世界相撲選手権大会の一コマだ。

 コロナ禍の影響で4年ぶりに開催されたこの大会は、当初、ロシアのある都市で行われる予定だった。ところが、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の中とあって、開催が不可能となり、急遽日本での開催となった。

 そんな中、28の国、地域から集まった男女選手たちは、年齢層も幅広く10代から50代まで。特にヨーロッパの選手は、相撲を趣味の一環として、長く競技を続ける傾向がある。

 じつは、世界相撲選手権の歴史は長い。1992年に第1回大会が開かれた時は、男子のみだったが、同大会の重量級で優勝したのは、中央大の出島武春(元大関・出島=現・大鳴戸親方)で、94年の重量級優勝者は日大の田宮啓司(元大関・琴光喜)。世界選手権は学生の登竜門的な役割も担っている。

 2001年からは、女子大会も開かれるようになったのだが、これは相撲をオリンピック競技にするための「策」だった。とは言え、日本をはじめ、ロシア、ドイツ、ポーランド、タイ、アメリカなどを中心に、「相撲女子」は増え続けた。

「ルールがわかりやすい。白黒勝負がきっちりつくところが魅力」(ポーランド女子選手)と、大会は盛況を極めて、20年が経った現在は、世界ジュニア相撲選手権大会(18歳以下)、アジア相撲選手権など(いずれも男女)、日本や各大陸で大会が開かれるほどになった。

前回大会から大きく飛躍したウクライナチーム

 さて、競技は女子の場合、軽量級(65キロ未満)、中量級(73キロ未満)、軽重量級(80キロ未満)、重量級(80キロ以上)、無差別級と、階級別になっていて、その他に団体戦(3人制)も行われる。

 今回、日本女子選手で唯一優勝を果たしたのは、無差別級の久野愛莉(東洋警備保障)。日大相撲部時代からの実力者で、今年の元日におこなわれた「女子相撲日本一決定戦」でも初代女王に輝いた。

「ここ数年、コロナ禍で思うように練習ができないことが苦しかった。でも、女子選手が集まって、合同で練習会を開いたり、工夫したりしてきたことが結果につながりました」(久野)

 と、納得の笑顔を見せた。

 前回大会から大きく飛躍したのは、ウクライナチームだ。男女10階級のうち、7階級で金メダルを獲得し、団体戦でも男女とも決勝に進出した。女子団体チームは、15年以来8年ぶりの優勝を果たしたのだ。

 ウクライナの飛躍の原因はどこにあるのだろうか? 高校時代、世界ジュニア相撲選手権で団体優勝の経験もある、間垣親方(元幕内・石浦)は、

「以前、ウクライナ選手の相撲はレスリングの延長のような感じだったけれど、今や相撲は『珍しいスポーツ』ではなく、相撲の本質を理解して、真剣に練習に取り組んでいるのが強さの理由。日本の大学の相撲部に留学して、本格的に練習している選手もいます」

 実際、女子重量級では、昨年のワールドゲームズの無差別級で優勝して、九州情報大に留学中のイワンナ・ベレゾフスカが、日本の今日和(アイシン)を下して優勝。現在、彼女は32歳だが、まだまだ強くなる要素がありそうだ。

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