最大の弱点を最後まで克服できず…16年新人王・阪神「髙山俊」が戦力外通告された全真相
「絶対に蘇る」トラ党の願いも叶わず
過去の栄光にしがみ付いたままの選手が悪かったのか、それとも、金の卵を育てられなかった球団が悪いのか。
【写真を見る】自身のインスタではファンへの感謝の思いを記した
10月2日からNPB各球団が「戦力外」を通告した選手名を公表した。10月11日現在でセ41人、パ51人、計92選手が“クビ”を宣告された(第1次通告期間は13日まで、第2次はCS終了翌日から日本シリーズ終了翌日まで)。そのなかにはセ・リーグ優勝チームの阪神も入っていたのだが、岡田彰布監督(65)が見切りをつけた選手は8人。衝撃的だったのは、2015年ドラフト1位で、新人王も獲得した髙山俊(30)が含まれていたことだ。
髙山は東京六大学リーグの通算安打記録131安打をマークし、ルーキーイヤーの16年には当時の球団新人記録となる136安打を放ち(シーズン打率.275)、抜群のバットコントロールを見せ付けていた。18年まで3年連続開幕スタメンを張っていたが、打撃不振が長引き、打率も17年は.250、18年は.172にまで落ち、同年は出場試合も45試合に。開幕2軍スタートとなった19年、巨人戦で代打サヨナラ満塁ホームランを放ち、復活の兆しをみせたものの(同年打率.269)、1軍と2軍を往復(21年度は1軍出場ナシ)する日々だった。
今季も一軍出場はゼロながら、ファーム戦で打席に向かう際、もっとも多くの拍手を送られていた。「このままで終わる選手ではない、絶対に蘇る!」、トラ党はそう信じていた。
「去年の第1次通告期間では、12球団で55人が戦力外通告を受けましたが、今年はずいぶんと多いですね。特に阪神はこの先、クライマックスシリーズ、日本シリーズが控えています。チームが一丸とならなければならないときの戦力外発表であり、髙山、北條史也(29)といった有名選手の名前もありましたから、その影響は小さくはありません」(在阪メディア関係者)
阪神が発表した8選手とは、髙山、北條、板山祐太郎(29)、山本泰寛(30)、二保旭(33)、渡邉雄大(32)、小林慶祐(30)、望月惇志(26)。
望月以外は「現役続行」を希望しており、小林はウエスタン・リーグのセーブ王である。阪神では出番がなかったが、救援投手が不足しているDeNA、巨人などに行けば、働き場はあるはずだ。
他にも力はあるものの、選手編成などのチーム状況で構想外となった選手もいる。トレードや現役ドラフトには掛けず、戦力外を通告したということは、「自分の意思で行きたい球団を決めてもいい」との“球団の親心”かもしれないが、髙山の場合はそうではないようだ。
昨年から意図されていた放出
「昨年から現役ドラフトが始まりました。その放出要員リストに髙山の名前が入っていたんです」(球団関係者)
現役ドラフトとは、出場機会に恵まれない中堅、若手をリストアップし、それを他球団が通常のドラフト会議同様、指名していくというもの。球界の活性化と選手に活躍の場を与える目的で昨年から導入された制度で、今シーズンではDeNAから中日に移籍した細川成也(25)が活躍するなど、一定の効果はあったようだが、
「各球団とも現役ドラフトのリストに入れたのは、戦力外の一歩手前の選手」
と、厳しい現実を伝える関係者もいた。つまり、髙山が昨年の時点で「クビ寸前の選手」だったことになる。
「髙山の場合は、打撃面での迷い。学生時代から内角球が苦手でプロ2年目からはそこを徹底して突かれました。相手投手が研究した以上の技術を習得できなかったのです」(前出・同)
髙山が1位候補として、評価を高めていた15年ドラフト会議の直前だった。左打ちの彼の打撃映像を見た複数のプロ野球界説者がこう苦言を呈していた。
「左手の人差し指、中指を立てている。全ての指を使ってしっかり握るべきだ」
髙山はヒットを量産するタイプである。意識して左手の人差し指、中指を立てていたのではなく、広角に打ち分けるバットスイングの柔らかさを追求していく過程で、自然とその握り方になったのだという。だが、プロ1年目はこうした“外野の声”も聞き入れ、左手でしっかり握る持ち方で臨んだ。
「入団1年目の136安打は、当時の球団新人記録でした」(前出・在阪メディア)
当時、解説者だった岡田監督は、週刊ベースボールの連載コラムでこう綴っている。
〈何より彼の長所は、バットコントロールのうまさやね。どのコース、どの球種にも対応できる技術を持っている。それが優れているゆえに、ボール球に手を出すというマイナス面もついてくるのだが、とにかくあのバットコントロールは非凡よ〉
さらに、
〈よく2年目のジンクスなんて言われるけど、高 山にはそれは当てはまらないと考える。なぜなら技術に裏打ちされているからよ。逆に1年目より2年目がより伸びる……という期待感が彼にはある〉
とも指摘していたが、残念ながらその予言は外れてしまった。2年目以降、インコースを徹底的に攻められ、相手投手の内角中心の配球にうまく対応できなくなっていく。
「苦手ではない真ん中や外角のボールが来ると、たとえストライクの投球でなくても手を出すようになりました。凡退が続くと、バットを寝かせたり、グリップの位置を変えたりするなど打撃フォームのマイナーチェンジを繰り返していました」(ベテラン記者)
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