初恋の人と偶然再会、調子に乗って不倫関係を続けた末に… 42歳夫が巻き込まれた愛人の恐ろしすぎる復讐計画とは
姉の“恨み”
両親が離婚したのは、聡美さんが6歳、里奈さんが4歳のころだった。聡美さんは、父親に力ずくで連れて行かれた。そして父と小さなアパートに暮らしながら、幼いころから家事をやらされ、ときに酔った父にから性暴力も受けたと手紙には書いてあった。
「あのとき、本当は自分が母と、里奈が父と一緒に暮らすはずだったとも。だから聡美は里奈を憎んでいたようです。聡美はずっと、母親と里奈の居場所を知っていた。僕が聡美と出会った中学生のとき、彼女はやはり父親とふたり暮らしだった。つらい時期だったんでしょう。そしてそこも追われてまた逃げた。父親はその後、薬物がらみで逮捕されたようです。聡美は親戚を頼って高校を卒業した。その後、ひょんなことから聡美に、父の親の遺産がいくらか転がり込んできた。彼女はそのお金で大学に入学、父とも決別してようやく人間として暮らせるようになったって。手紙には『隆平さんは離婚して私と一緒になるって言ってる』と書いてありました」
里奈さんはため息をつきながら、「あなたが姉に騙されるくらいなら、最初から注意してと言っておけばよかった」と小さな声で言った。里奈さんも実は、自分の周りを嗅ぎ回っている聡美さんの存在に気づいてはいたのだという。そして里奈さんは、あの日、母と一緒がいいと激しく泣き叫んだために父がイライラして姉の腕をつかんで去ったことを覚えていた。
「いつか姉に復讐されるかもとは思っていたけど、こんな形で来るとはねと里奈は泣いていました。僕は知らなかったけれど、知らなければ浮気してもいいということにはなりません。しかも聡美にはけっこう本気だったから、騙されていたとわかってショックだった」
隆平さんは里奈さんに土下座するしかなかった。ここで離婚なんかしたら、姉の思うつぼよ、そうはさせないと里奈さんは言った。
「外敵が現れて夫婦が一致団結みたいな妙なことになりました。翌日、会社に行くと聡美が辞めたと話題になっていた。本当に聡美は、妹を苦しめるためだけにこの会社に来て、がんばって正社員になったのかと思うと、それはそれで複雑な気持ちになりました。なんだか現実がおかしすぎて、自分の身に起こっていることだと思えなかったんです」
さらなる復讐計画
その後、彼は上司に呼ばれて聡美さんから「無理矢理、性行為を迫られた」と訴えがあると聞かされた。彼が仕事を失って窮すれば、里奈さんも困る。それもまた復讐計画のひとつだったのだ。
「ただ、聡美本人が仕事を辞めて行方もわからないので検証するのはむずかしい。それでも黙って今まで通りというわけにもいかない。ほとぼりが冷めるまで異動先でおとなしくしてろと言われ、閑職に追いやられました。もうひとつわかったのは、聡美は結婚していなかったし、子どももいなかったということです」
ひょっとしたら息子にも危害を加えられるかもしれないと彼は焦った。浮気の件は隠したまま、母親の姉がつけ回してくる可能性があるから気をつけるよう息子に伝えた。里奈さんは地元の警察に相談もしている。
隆平さんは聡美さんの自宅にも行ってみたが、すでに越したあとだった。中学生のときと同じ状況だなと思い出した。
「オレたち、どうすると里奈に言ったことがあるんです。『あなたのことはもう信用していないけど、家庭を壊したくはない』と言われました。このままでいいということみたいですが、もちろん家庭の雰囲気はガラッと変わってしまった。僕は極力、前と同じように接しているつもりですが、里奈の心は読めない」
里奈さんはカウンセリングに通っている。自分では処理しきれない感情に揺れ動いていたが、少しずつ整理されていると感じることもある。いずれにしても、そばで見ているしかない隆平さんもつらい。
「復讐には成功したかもしれない聡美だけど、彼女も、おそらく里奈と同じように混乱しているんじゃないかと思う。たったひとりで聡美はどうしているのかと思うこともあります」
人生を狂わされたという結果になるのか、狂わされかけたというところで踏みとどまれるのか、今が正念場なのかもしれないと隆平さんは言った。
前編【初デートの翌日、父親と共に夜逃げした初恋の人 42歳男性が喪失感を抱えたまま出会った妻と、後に判明するまさかの関係】からのつづき
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