初恋の人と偶然再会、調子に乗って不倫関係を続けた末に… 42歳夫が巻き込まれた愛人の恐ろしすぎる復讐計画とは

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急接近

 半年ほどたったとき、初めてふたりでランチをした。彼女は結婚していたが夫がコロナ禍で急死したこと、中学生の娘とふたりで暮らしていることなどを話してくれた。「夜逃げ」してどうなったのかという話はしなかったし、彼もあえて聞かなかった。触れられたくないこともあるのが人間なのだから。

 ただ、そこからふたりの距離は縮まり、それが仕事にいい影響を及ぼした。さらに半年後、彼女は「正社員になれそう。隆平さんのおかげです」と笑顔を見せた。

「無事に正社員になった彼女は、アシスタント業務ではなく僕らと一緒にハードワークに取り組むようになりました。ますます能力を発揮してくれましたね。あるとき、『今日は娘が合宿でいないので、食事でもどう? 今後の仕事のことも相談したいし』と誘われたんです。彼女はイタリアンレストランを予約してくれ、その席で『正社員になれて本当にありがたい。改めてお礼をしたかったの』って。それはあなたの実力、僕は何もしていないと言いました。ただ、その晩は本当に楽しかった」

 お酒なんて久しぶりという聡美さんだったが、仕事で見せる生真面目さを捨てたようによく飲み、よく食べ、よくしゃべっては笑っていた。中学生のときの初恋の思い出がよぎり、隆平さんは心を奪われた。

「ずっとあなたが好きだった」

 酔った彼女を自宅まで送ると「帰らないで」とすがりつかれた。彼はそれを予測していたという。そしてそうなってもいいと思っていた。家庭と仕事さえあればいいと思って10年を過ごしてきた彼が、四半世紀ぶりに聡美さんに出会って、一瞬、箍が外れたのかもしれない。

「彼女は『ずっとあなたが好きだった。もう自分の気持ちに嘘はつけないの』って。僕もそうだったと言ってしまいました」

 激しすぎる一夜だった。とろとろとまどろんで、ハッと目を覚ますと午前3時を回っていた。そうっと彼女の部屋を出てタクシーで自宅に戻った。気づけば彼女の家と隆平さんの自宅とは車で10分もかからない距離だった。

 自宅に戻って里奈さんの寝顔を見たとき、「猛烈に罪悪感を覚えた」と彼は言う。水を飲んだコップをわざわざテーブルの上に放置し、ネクタイをゆるめてリビングのソファに寝転んだ。聡美さんとのことを反芻していると、眠ることはできなかった。

「大丈夫? という里奈の声で起きたふりをして……。『うわ、オレ、酔っ払ってたのか』とわざとらしくつぶやくと、『終電に間に合わなかったんじゃない? 私は寝ちゃったからわからないけど』と里奈。終電で帰ってきたような気はするけどと、もごもご言い訳していると、『シャワーでも浴びてきたら』と言ってもらって救われました。シャワーを浴びてからは、僕が朝食を作り、里奈がお弁当を作ってというルーティンに戻った」

 バレなかったどころか疑われもしなかった。それが妙な自信になったのか、あるいは聡美さんへの強い思いを断ち切れなかったのか、彼は聡美さんとかえって頻繁に会うようになった。

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