30年前と酷似…中国で進む若者の日本化 “寝そべり族”の大量発生で「恋愛の仕方がわからない」

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社会の閉塞感に絶望した若者が「日本化」

 不動産バブルの崩壊が災いして長期不況に陥るリスクが生じていることから、中国経済の「日本化」が指摘されることが多くなったが、筆者は、高まる社会の閉塞感に絶望した若者の間で広がる「日本化」にも注目している。

 中国の「寝そべり族(タン・ピン)」は日本でも有名になった。タン・ピンとは「だらっと寝そべる」という意味で、仕事をしないで寝そべって何もしない、結婚もしないというライフスタイルを指す。30年前のバブル崩壊後の日本でもこのような若者が大量に発生していたことが思い起こされる。

 中国の昨年の婚姻件数は前年比11%減の683万組と、9年連続の減少となった。ピークの2013年から半減した形だが、婚姻件数はさらに減少することが確実視されている。

 寝そべり族が増殖したせいで、「結婚しない」若者が急増しているからだ。中国では2021年時点で15歳以上の独身者の人口が約2億3900万(中国統計年鑑2022)に達したが、彼らが「結婚しない」ことが大きな社会問題になっている。中国紙「中国青年報」が交際相手のいない男女を対象にアンケート調査を実施したところ、男女とも悩みは「恋愛の仕方が分からない」だった。

若者の「日本化」が社会に混乱をもたらす危険性

 中国で進む若者たちの「日本化」について、筆者は「社会を混乱させるリスクを内包しているのではないか」との思いを禁じ得ないでいる。

 日本ではすでに「ブラックバイト(就業環境が劣悪、常識はずれの低賃金など条件が悪すぎるアルバイト)」という言葉が定着しているが、近年は中国でも大学生らを狙ったブラックバイトが横行している。マルチ商法の片棒を担ぐケースなども増えているという(9月12日付東方新報)。

 日本では2000年代以降、刑法犯の認知件数は減少傾向にあるが、中国の刑法犯は2001年から2021年にかけて2倍以上に増加している。国防費を上回る予算を社会秩序維持のために投じているのにもかかわらずに、である(9月30日付共同通信)。

 さらに中国の深刻な状況とは、「社会的地位の低い」男性が不特定多数を標的にする襲撃事件(社会報復事件)の増加に歯止めがかからないことだ(7月11日付BBC)。

 若者の「日本化」が社会に混乱をもたらす危険性は、排除できないのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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