シーズン1位でも「日本シリーズ」に出場できず…不運に泣いた“悲劇の球団”

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CSでの最終的勝利を狙っていた落合監督

 セ・リーグでCSが導入された2007年、シーズンを制しながら、CSで中日に悪夢の3連敗を喫したのが、巨人である。

 両チームはシーズン終盤まで熾烈なV争いを繰り広げ、巨人が1.5ゲーム差で逃げ切った。だが、中日・落合博満監督は、無理をしてシーズン1位を取るよりも、CSでの最終的勝利を狙っていた。また、中日が阪神とファーストステージを戦っている間、巨人がファイナルステージまで約2週間も実戦から遠ざかったことも、チームの調子に少なからぬ影響を与えた。

 第1戦、中日の先発を右の山井大介と読んで、左打者7人を並べた巨人だったが、いざふたを開けてみれば、先発は左の小笠原孝。完全に裏をかかれた巨人打線は5回まで1得点に抑えられ、2対5で敗れた。

 さらに第2戦でも1対1の4回1死一塁、送りバントと思われた場面で、川上憲伸のバスターに意表をつかれてピンチを広げた直後、荒木雅博に2点タイムリーを許し、連敗。そして、第3戦もウッズに逆転3ランを浴び、まさかの3連敗で日本シリーズ進出を絶たれた(CS初年度はセ、パともにアドバンテージなし)。

 それから7年後の2014年、巨人は再びCSでストレート負けの悪夢を味わうことになる。

「最後に勝つのは我々なんだ」

 2位・阪神に7ゲーム差をつけてリーグ3連覇を達成した原巨人だったが、エース・菅野智之が右肘故障で投げられないことが、大きなハンデとなる。

 第1戦は内海哲也が初回にわずか8球で3点を失ったことが響き、1対4と完敗。第2戦も沢村拓一が5回に危険球退場のあと、緊急リリーフの久保裕也が流れを止められず、2対5で敗れた。

 さらに、第3戦も初回に阿部慎之助のタイムリー、3回に亀井善行のソロで2対0とリードしたが、CSに入って絶好調の4番・ゴメスに3打点を許し、2対4の逆転負け。シーズンに比べて、1球の怖さが格段に大きくなるのも、CSならではである。

 そして、「さあ、長丁場になるぞ。最後に勝つのは我々なんだ」という原辰徳監督の檄も虚しく、第4戦も4対8と打ち負け、3年連続の日本シリーズ進出ならず。菅野の離脱に加え、打線の中心を担う阿部、坂本勇人がともに打率1割台と投打のバランスの悪さが、投打ともに上り調子の阪神と明暗を分ける結果につながった。

 このほか、2010年のソフトバンク、2017年の広島、2018、19年の西武もシーズンを1位で通過しながら、CSで苦杯をなめている。最大で6戦(引き分けは除く)の短期決戦の中で、チームをベストの状態に持っていくのは、容易ではないことがわかる。

 阪神、オリックスがそのまま日本シリーズに進出するか、それとも下克上の波乱が起きるのか、今年もCSの行方から目が離せない。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

デイリー新潮編集部

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