連敗で窮地に追い込まれたチームが奇跡の3連勝…CSで起きた球史に残る“大逆転劇”

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「今日はバカになって野球をやろう」

 第1戦からいきなり連敗という悪い流れを総力戦の末に断ち切り、最後は王者の貫禄を見せつけたのが、2017年のソフトバンクである。

 94勝49敗、2位・西武に13.5ゲーム差をという前評判どおりの強さでシーズンを制したソフトバンクだったが、CSファイナルステージでは、ファーストステージで西武を蹴落とし、3位から浮上してきた楽天に思わぬ苦戦を強いられる。

 第1戦では東浜巨が3本塁打を被弾し、2対3の黒星スタート。第2戦も1対1の7回に千賀滉大が嶋基宏にタイムリーを許し、まさかの連敗となった。どんなに強いチームでも、短期決戦では何が起きるかわからないのが、野球の難しさである。

 第3戦も和田毅が5回にアマダーに同点2ランを浴び、予断の許せない展開となるが、試合前、「今日はバカになって野球をやろう」と工藤公康監督自ら開き直り、打線を大幅に組み替えたことが、終盤に生きる。5対5の8回、3番から7番に下がった中村晃が福山博之から意地の決勝2ランを放ち、7対5で打ち勝った。

 さらに、第4戦も2対0から逆転される悪い流れとなったが、6回に内川聖一のCS同一シーズン初の4試合連続弾と中村の2者連続ソロで4対3と再逆転。7回からモイネロ、サファテとつないで逃げ切った。2戦続けて苦しい試合を乗り切ったことで、1度はそっぽを向きかけた勝利の女神も、再びソフトバンクのほうに顔を向けた。

 そして、流れを掴んだ第5戦はようやく王者の本領を発揮して、7対0の完勝。「2連敗して正直やばいという雰囲気があったが、みんなが死に物狂いになって、日本シリーズに行きたいという思いが勝利につながった」(工藤監督)。

 その日本シリーズでは、セ・リーグ3位から躍進してきたDeNAを4勝2敗で下し、2年ぶりに日本一を奪回した。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

デイリー新潮編集部

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