連敗で窮地に追い込まれたチームが奇跡の3連勝…CSで起きた球史に残る“大逆転劇”
「七転び八起きの精神」
短期決戦のクライマックス・シリーズでは、連敗すれば、日本シリーズ進出にも黄信号が灯ってしまう。だが、過去には連敗で窮地に立たされたあとに、チーム一丸となって劣勢を挽回し、“シリーズ切符”を掴んだチームもある。【久保田龍雄/ライター】
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第1戦から3連敗し、崖っぷちに追い込まれたあとに、3連勝して日本シリーズ進出を決めたのが、2012年の巨人である。同年、2位・中日に10.5ゲーム差のぶっちぎりで3年ぶりVを実現した巨人は、CSファイナルステージでも中日と対決した。
中日・高木守道監督にとっては、1994年の10・8決戦(シーズン最終戦の優勝決定戦)で巨人に敗れた雪辱戦。ナインも3年連続の日本シリーズ進出に向けて闘志満々だった。
第1戦は、1対1の6回に平田良介の二塁打で勝ち越すと、9回にもポストシーズン連続打席無安打記録を更新中の谷繁元信が61打席ぶりとなるタイムリー二塁打を放ち、3対1で先勝した。
さらに、第2戦では、伊藤準規の投打にわたる活躍で5対2と連勝。第3戦も4対4の延長10回に代打・堂上剛裕が決勝タイムリーを放ち、あれよあれよという間に王手をかけた。
一方、まさかの3連敗であとがなくなった巨人・原辰徳監督は「明日からしっかり戦うということ。これ以上でもこれ以下でもない」と全員がベストを尽くすことにすべてを賭けた。ここから奇跡的な反攻が始まった。
第4戦を阿部慎之助の2本のタイムリーなどで3対1と競り勝った巨人は、第5戦も石井義人のサヨナラ打で3対2と連勝。アドバンテージと併せて3勝3敗のタイに持ち込む。
こうなれば、流れは巨人のもの。第6戦も2回に寺内崇幸と長野久義のタイムリーで3点を先制して序盤から主導権を握ると、先発・ホールトンも5回を無失点。リリーフ陣も中日の反撃を2点に抑え、4対2で逃げ切った。「このチームは(3連敗で)2、3発引っぱたかれ、七転び八起きの精神で進化した」(原監督)。
遅まきながらエンジンがかかった巨人は、日本シリーズでも日本ハムを4勝2敗で下し、3年ぶりの日本一を達成した。
シーズン3位からの下克上
シーズン1位のチームに連敗し、あとがなくなったところから、怒涛の反撃でCS史上初のシーズン3位からの下克上を達成したのが、2010年のロッテである。
ソフトバンクに2.5ゲーム差の3位でシーズンを終えたロッテは、ファーストステージで2位・西武に連勝し、ファイナルステージに駒を進めてきた。
第1戦は、2回に大松尚逸の3ランで先制、中4日登板の成瀬善久が1失点完投と投打がかみ合って先勝したが、第2戦は1対3、第3戦も0対1と接戦を続けて落とし、ソフトバンクに王手をかけられてしまう。
だが、西村徳文監督は「負けたら終わりという状況はシーズン終盤と同じ。そこから勝ってきたのだから、選手を信じるだけ。大丈夫でしょう」と“奇跡”を信じていた。
その言葉どおり、第4戦では渡辺俊介が90キロ台のスローカーブを織り交ぜた変幻自在の投球を見せ、4対2で逃げ切り。これで再び流れはロッテに。第5戦は大隣憲司、ファルケンボーグの継投の前に6回までゼロに抑えられたが、0対1の7回、サブローの二塁打など5長短打を集中して逆転。5対2で勝利し、3勝3敗のタイに持ち込んだ。
そして、両軍ともにシリーズ進出がかかった第6戦は、第1戦に続いて中4日先発の成瀬が完封し、7対0と圧勝。この日3安打2打点を記録した今江敏晃の「3位から這い上がって来て、守るものがなかった。楽しもうという雰囲気があった」の言葉がすべてを象徴していた。
「日本シリーズで千葉に帰るというファンとの約束をはたせてうれしい」(西村監督)とさらなる高みを目指したチームは、中日との日本シリーズでも、4勝3敗1分で史上初のリーグ3位からの日本一を実現している。
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