中国の若者、本当の失業率は「5割弱」という衝撃のデータ! 迫る不動産バブル崩壊…日本は中国と距離を置くべきか
「留学生で帰国して働く学生はいない」
その影響は、来日する中国人留学生たちの動向からも顕著だと指摘するのは、現代中国研究が専門の東京大学教授・阿古智子氏だ。
「コロナ禍前までは、日本に来る中国人留学生の間で帰国した方が就職に有利だといわれていました。中国国内のIT企業やコンサルティング企業をはじめ、国営企業にも就職した学生が結構いたわけです。ところが、そうした中には国内景気の衰退で転職を余儀なくされたり、再び日本に来てIT関連企業に再就職したりする人が多い。この数年来、私の周囲にいる中国人留学生で帰国して働く学生は一人もいません」
結果、中国国内では「専業子供」と呼ばれる若者の存在が社会問題化している。親の庇護の下で暮らし、良い大学を出たのだから好待遇の仕事が見つかるまでゆっくり就活する人々や、熾烈(しれつ)な受験戦争や就職戦線で心を病み、将来を悲観し引きこもる「寝そべり族」なんて人々もいるとか。
すでに中国では「ひとりっ子政策」の弊害で少子高齢化社会が到来しつつあるが、労働人口の減少と共に若者の失業率が上昇を続けて「専業子供」が増えれば、技術の伝承や蓄積も滞る。長期的には中国の経済成長に大きな弊害となるのは必然である。
日本にとってのリスク
それは中国を最大の貿易相手国とする日本にとって、どの程度のリスクとなるのか。国連の専門機関である国際通貨基金(IMF)や内閣府の試算を基にすると、中国のGDPが1%変われば、日本の成長率は0.65%変化するという指摘もある。いわば経済分野では一蓮托生となりつつあると言っても過言ではない。
再び高口氏に聞くと、
「中国嫌いの人にとって経済の悪化は聞き心地がいい話かもしれませんが、日本にとっては歓迎すべき話ではありません。今、私は上海にいますが、店先には日本ブランドの化粧品や衣料から玩具までが並び、体験型サービスではストレッチや料理教室のスタジオなど多くの日本企業が進出しています。これらも中国の内需が減少すれば売り上げが下がるでしょう。また半導体の製造装置や電子部品などを日本は中国に輸出していますから、広い範囲で日本経済に影響があると思います」
筑波大学名誉教授で中国問題グローバル研究所所長の遠藤誉氏はこんな意見だ。
「中国の失業率が高い要因は、アメリカが制裁の一環として先端半導体の製造装置などを中国に輸出することを禁じた影響で、ハイテク産業などの製造業における求人募集が停止したことです。日本もアメリカに追随して23品目を輸出管理の規制対象に加え禁輸措置を取っていますが、日本産水産物の輸入禁止はこの報復でもあります。このような対立の構図が続けば、いくら中国が経済問題を抱えようと日本を含む西側諸国へ擦り寄ることはありません」
中国と距離を取るべき?
かように厄介な隣人に日本はどう対処すべきか。前出の阿古氏に言わせれば、
「新疆ウイグル自治区への対処といい、こと中国への対応で日本は遅きに失することが多く心配です。欧米各国との貿易のような開かれた経済交流が望めない以上、たとえばEUは人権や環境に関して企業が実施すべき注意義務を大企業には来年12月30日から、中小企業には再来年6月30日から適用し始めます。日本もこれらの基準を明確化し、基準に合わない国や企業とは距離を置くべきです」
政治的な関係は冷えこんでも経済では過熱している。そんな日中関係を「政冷経熱」と呼んだ時代はとうに過ぎ、全てにおいて冷徹に対峙すべき時なのである。
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