アマチュア野球の視察、優秀なバッテリーコーチの招聘…阿部慎之助・新監督が名将になるため巨人OBが送るアドバイス

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古田敦也の弱点

 広澤氏は古田氏のチームメイトでもある。古田氏が監督としては実績を残せなかった理由についても分析してもらった。

「プロ野球の監督に限らず組織のリーダーは、“知”と“情”、そして“恐怖”で部下を率います。知は野村さんの読書で見た通りです。情は日本代表の監督を務めた栗山英樹さん(62)が好例でしょう。選手に対する細かい配慮で、日本代表はWBCで世界一に輝きました。そして恐怖は、暴力を意味しません。監督は選手をスタメンから外したり、二軍に降格させたりすることで強いメッセージを発することができます」

 新監督が就任時、ベテランに引導を渡すことが多いのも同じ理由だという。2002年に阪神の監督に就任した星野仙一氏(1947〜2018)は、20人以上の選手を引退・自由契約・トレードし、チームの大リストラを敢行した。

「阪神の監督に就任した星野さんは、選手に鉄拳を振るったわけではありません。大リストラをしたことで、『俺の言うことを聞かないとどうなるか分かっているな』と選手に恐怖心を植え付けたのです。これで阪神の意識改革が進みました。チームに星野イズムを浸透させることができたのです。古田は知も情もありましたが、恐さに欠けていました。監督としての彼は、選手にとって『ただの兄貴分』で終わってしまったのです」(同・広澤氏)

 この「ただの兄貴分で終わってしまう」という問題は、「阿部新監督も肝に銘じなければならない」と広澤氏は指摘する。特にコーチ陣の組閣で重要な意味を持つという。

「巨人には素晴らしい成績を残したOBが、それこそ山のようにいます。コーチの候補者に困ることはないでしょう。しかし、『名選手、名監督にあらず』と言いますが、コーチも同じです。単に選手の兄貴分に終わってしまったコーチも多いのです。日々の練習の中でプロの選手として必要な緊張感を維持させるためには、ある種の恐怖が必要です。『コーチは俺たちのことをよく見ている。少しでも気を抜くと二軍に落とされる』という恐怖です。知、情、そして恐怖のバランスを最適なものにするためには、コーチ陣の充実は必要不可欠。阿部新監督の“組閣力”が試されていると言っても過言ではないでしょう」

正捕手育成が最大のカギ

 監督は自身の後継者を育てることが少なくない。ヤクルトの監督時代、野村氏が心血を注いで古田氏を一流の捕手に育てたことはよく知られている。ダイエー・ソフトバンクの監督を務めた王貞治氏(83)の門下生と言えば、小久保裕紀氏(51)と松中信彦氏(49)の名前が挙がる。

 巨人は正捕手不在と言われて久しい。今季は大城卓三(30)が活躍したが、レギュラーを争う小林誠司(34)と共に“名捕手”という評価は受けていない。同じ捕手経験者として、阿部新監督は2人に熱血指導を行うのだろうか。

「率直に申し上げますが、本来なら阿部くんは監督になる前、コーチ時代に大城くんや小林くんを育てなければならなかったのです。コーチ時代にできなかったことが、監督になってできるはずもありません。巨人にとって捕手の育成は急務です。阿部くんは優秀なバッテリーコーチを招聘する必要があるでしょう。いの一番に着手すべき案件と言っていいと思います」(同・広澤氏)

デイリー新潮編集部

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