【巨人】阿部新監督に望むこと 忘れられない川上哲治監督の豹変【柴田勲のセブンアイズ】

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「基本」に対する川上哲治の確固たる姿勢

 私は川上(哲治)さん、長嶋(茂雄)さん、藤田(元司)さんの下でプレーし、そして王(貞治)さんの下では1軍守備・走塁コーチを務めた。

 この四人の中で最も基本に忠実だったのが川上さんだった。現役時代は自分勝手な振る舞いが多かったというが、監督に就任したとたん、「基本、基本」とうるさくなった。豹変したことに陰口もあった。でも川上さんの確固たる姿勢が日本シリーズ9連覇の土台となった。

 10本しかヒットを打てない打者が40本打つのは難しい。でも12本は打てるようになる。145キロの球しか投げられず2、3勝しか挙げられない投手でも、やり方によっては7、8勝できるようになる。

 打者はボール球を振らない。相手投手を助けることになる。甘い球を見逃さない。

 投手にとって最も大切なのはコントロールで、生命線は外角低めの速球だ。ここに決めることができてこそ、カーブ、スライダー、フォークなどの変化球が生きる。変化球はいつでも投げられる。

 守備に派手さはいらない。基本に忠実に丁寧を心がける。守備範囲が狭い、広いはセンスの問題だが、基本の上に練習で鍛え上げることができる。

 走塁、これはもう全力疾走だ。誰でもできる。さらに一つでも次の塁を狙う姿勢を持つ。

技術の向上も基本があってのこと

 その後、もっと“味付け”、つまり技術の向上が必要だが、基本があってのことで、なにより基本の反復が大事だ。

 もとより巨人の課題は若手育成だ。

 阿部はセレモニーで「とにかくファンの皆さんのために強い巨人軍、愛される巨人軍を作るべく、チーム一丸となっていく所存です」とあいさつをしていた。

 24年は球団創設90周年の記念の年だ。4年ぶりのリーグ優勝、12年ぶりの日本一と目指すものはあるが、何よりも着手すべきは「基本の反復」だ。

 阿部新監督には大いに期待しているし、来季の巻き返しを信じている。

 それにしてもDeNAとの最終戦を白星で飾ってよかった。球団初の3年連続負け越しを回避できた。原監督もうれしかったに違いない。

柴田 勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会理事を務める。

デイリー新潮編集部

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