「オマエらの客が注文したから来たんだぞ!」外国人観光客の増加でフードデリバリーサービスのトラブルが多発中 高級ホテルのロビーで繰り広げられる修羅場

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「荷物は預かるじゃないかッ!」

 こういう場合、大抵の外国人宿泊客は外出しているという。何をしているのかは不明だが、配達員が何度も電話をかけても一切出ないそうだ。

 外国人宿泊客も、やむを得ず急に予定を変更する必要が生じたのかもしれない。ひょっとすると、知らない番号には出ない主義なのかもしれない。とはいえ、常識ある大人なら、配達員の到着時間は把握しているだろう。その際に電話がかかってきたのだから、出てくれてもいいのではないか。もしくは外出する際、サービスセンターにキャンセルを通知してくれればよかったのに──これが配達員の本音だ。

 配達員は商品を抱えて途方に暮れる。まさに放置プレイ。ひょっとすると宿泊客は、「どうせ10分が経過すると自動キャンセルになる」と判断し、スマホに着信が表示されてもスルーしたのかもしれない。

 ホテルスタッフの目の前で、配達員はキャンセル処理をしなければならない。その姿に心を打たれ、謝罪するスタッフもいるという。もちろんホテル側に非はない。それでも宿泊客の代わりに配達員に謝るのだ。

 だが、その際に「ホテルで預かってくれないか?」と言い出す配達員がいるという。ホテルには「食べ物は衛生上の理由から預からない」という大原則がある。スタッフが事情を説明して拒否すると、ここで怒鳴る配達員もいる。「ゴルフバックや荷物は預かるじゃないかッ!」と食い下がるのだ。

言葉の壁

 またもや配達員とホテルスタッフの間でバトルが勃発してしまう。少なからぬスタッフが「規則やルールは一体、何のために存在しているのか?」と悩む。そもそも注文した外国人宿泊客のマナーに問題があるとは分かっていても、配達員との間で頻発するバトルで激しく疲弊してしまう。

 ひと昔前なら、こんなトラブルは起きなかった。宅配業者が入れ替わり立ち替わりホテルに配達に来ることなどなかった。そのためフードデリバリーサービスのキャンセル事案について、対応マニュアルもなければ、研修も行われていない。ホテルスタッフは配達員と宿泊客の板挟みとなり、日々の対応に苦しんでいる。

 またトラブルが頻発する背景として、言葉の問題もあるようだ。中国人観光客を多く見てきたツアーコンダクターのCさんは「外国人宿泊客が配達員からの電話に出ないのは、彼らの多くは日本語が分からないからです。また外国語を流暢に話す配達員も少ないでしょう」と指摘する。

 一流ホテルは外国語を話すスタッフも多く、無料の通訳サービスも行っている。だが、活用する外国人宿泊客は稀だという。多くは「無料の通訳」という概念に乏しく、日本人との会話に尻込みする。観光で日本を訪れておきながら、日本語を徹底的に避けるのだ。

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