「オマエらの客が注文したから来たんだぞ!」外国人観光客の増加でフードデリバリーサービスのトラブルが多発中 高級ホテルのロビーで繰り広げられる修羅場

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高級ホテルでの“ラグビー”

 要するにホテル側は、配達員が宿泊客の部屋を訪れることを実質的に禁止している。だが、宿泊客はパソコンやスマホを使ってフードデリバリーサービスにアクセスすると、部屋番号も伝えて注文し、クレジットカード決済を完了させてしまう。

 配達員はホテルの規則を知らないまま、部屋まで届けようとする。ところが、エントランスやロビー付近で、ホテルスタッフによって制止されてしまう。ここで「トラブル発生!」となるわけだ。

 もう決済は終わっている。その責任を感じている配達員は、依頼通り客室へ商品を届けたい。一方のホテルスタッフは、規約や規則に明記されているのだから、配達員の“無断侵入”を許すわけにはいかない。高級ホテルの静寂なエントランスやロビーで、さながらバスケットやラグビーのような「突破と阻止」が繰り広げられていることも珍しくない。

 そして堪忍袋の緒が切れた配達員が、特にホテルスタッフが若い女性の場合、「どけっ、コラァ!」「テメェに責任が取れるのかッ!」「オマエらの客が注文したから来たんだぞ!」と大声で罵声を浴びせることもよくある光景だという。

 とあるフードデリバリーサービスでは、玄関先に商品を置く「置き配」が選択されていない限り、指定された建物に到着して10分以内に商品を手渡せないと自動キャンセルになってしまう。ホテルスタッフが制止しても、配達員は必死になって突破を試みる。

「クレーム客より恐ろしい」配達員

 こんなバトルが毎週、少なくとも数回は起きる。多い時は一日に何度も起きる。配達員は「ホテルの規約や規則には欠陥がある」ことを訴えようとして怒鳴っているのかもしれないが、スタッフのAさんにとっては単なる修羅場でしかない。

 やはり大手外資系ホテルに勤務しているBさんは、「スタッフの間では、クレーム客よりも配達員のほうが恐ろしいと感じている人も増えた」とのことだ。

 配達員から幾度となく大声で怒鳴られ続けた若い女性スタッフが、精神的に参ってしまい、そのまま退職してしまうこともある。

 ホテル業界も昨今の各業界同様、人手不足の問題を抱えており、乱暴な配達員とのトラブルで退職するスタッフが急増していることに頭を悩ませている。

 もちろん配達員の誰もが乱暴な性格であるはずもなく、冷静に状況を解決しようとする者もいる。ホテルのエントランスやロビーから、注文者である外国人宿泊客にスマホで連絡するわけだ。ところが、ここでも「トラブル発生!」となるケースが少なくない。

 宿泊客が配達員の電話に応じれば、どこで受け渡しをするか決めることができる。ところが、電話に出ない外国人は珍しくない。配達員が電話をかけた瞬間から、自動キャンセルの条件である10分間のカウントは始まってしまう。

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