認知症の“85歳妻”を絞殺した80歳夫 発覚が遅れたら「容疑者も自殺していたかも…」 事件の裏にあった「ワンオペ介護」と絶たれた“最後の希望”
「妻に足湯」
複数の近隣住人が語るには、吉田容疑者はもともと都内のデパートに長く勤めていたといい、経歴どおり「折り目正しく穏やかな性格」の人物だったという。年金だけでは妻の目の治療費まで賄えなかったのか、現場となったアパートに越してきて以降、シルバー人材センターを介して週3回、公園の清掃業務に就いていたという。
自治会関係者が言う。
「認知症の発症以降、奥さんが徘徊したり、“財布がなくなった”などと言ってはヨソの部屋のインターフォンを鳴らすなどの奇行も増えたといいます。ある時、吉田さんが『妻に足湯をさせてあげようと思ったら、準備している間にいなくなった』と慌てた様子で言うので、一緒に周辺を探したこともあった。いよいよ見つからなくて“警察を呼ぼう”となった時、奥さんがフラっと帰ってきて、事なきを得た。吉田さんは胸を撫で下ろしていましたが、正直、奥さんの世話を一人で抱え込むには限界があると感じました。結婚している娘さんが一人いるそうですが、状況をどこまで正確に伝えていたのか……。結局、子供には最後まで頼らなかったようです」
「施設が見つかりそう」
容疑者と親交のあった住人が明かす。
「実は事件の1週間前に会った際、吉田さんは『ケアマネージャーに(妻を介護してくれる)施設を探してもらっているんだ』と、少しだけ肩の荷が下りたような表情で話していた。その矢先に今回の事件が起き、本当に悔やんでも悔やみきれない思いです。事件の2~3週間前から急に認知症が悪化し始めたようで、奥さんの大きな声が部屋の外にまで聞こえてくる時もあった。その頃から吉田さんも塞ぎ込みがちになり、事件の数日前からは清掃の仕事も休んで、部屋から一歩も出てくることがなくなった」
殺害翌日の区職員との面談予定も、妻の施設入所に関するものだった可能性が高いという。“あと少し”で事態は好転したかもしれず、その希望すら見失い、コードを手にした瞬間、容疑者の胸に去来したものは何だったのか。