ジャニーズの会見は“成功”だった? 「記者の暴走」と「井ノ原副社長のコミュ力」が作った「ジャニーズ側も被害者」という空気 

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経営者としての未熟さを逆手に? ジュリー氏の手紙とイノッチの好感度による「ジャニーズシステム」的視線の獲得

 ただ感情主導の会見になったのは、欠席したジュリー氏の手紙の影響も大きい。会社の経営という意味でも、親族としても、ジャニー氏とメリー氏の強権支配に成すすべもなかったとつづられていた。パニック障害まで患うほどに、母・メリー氏におびえていたという。ただいささか手厳しいことを言えば、これまでお飾りの役員だったとしたら、どのくらい今後の被害者補償の実務に取り組んでいけるのかという疑問は残る。

 現事務所は被害者補償に徹した後に廃業、タレントたちの育成とマネジメントは新たに設立する会社に担わせるという発表があったが、弁護士によればファイナンスについても外部取締役についても検討中だという。

 うやむやになっているが、ジャニー氏以外の社員からのセクハラがあったことも報じられている以上、公平かつ冷静な第三者の介入は絶対に必要だろう。ただし会見では「覚悟をもって」とか「対話をしっかり」など、精神論にとどまっている。

 一般企業の会見なら絶対に指摘される。けれども今回許されてしまったのは、一部の記者たちの暴挙だけでなく、井ノ原さんのコミュニケーション力の高さによるところが大きいだろう。揚げ足を取られまいと正論ベースで話す東山さんとは対照的に、自分の意見を正直に話そうという井ノ原さんの姿には、多くの人が好感を持った。だからジュリー氏の手紙の代読も、社長である東山さんではなく井ノ原さんに託されたに違いない。

 経営者としての知見は足りず、未熟かもしれないけど、一生懸命やっているイノッチたちを応援していこうよ――まさにジャニーズアイドルを育てていく時のような視線が、会見場にもお茶の間にもインストールされてしまったのではないだろうか。

経営者として決別すべきアイドルシステム

 そうはいっても、今まで触れることすら禁忌とされてきたジャニーズ事務所の経営者が、顔がはっきりわかる社長・副社長になったというのは大きな一歩なのだろう。

 元SMAPの中居正広さんは、アイドルの魅力とは未完成・半人前であることだと「まつもtoなかい」で語っていた。はからずも古巣の会見で井ノ原さんがそれを体現してみせたわけだが、経営者としてやっていく以上はいつまでも半人前を武器にはできない。そもそも、未熟な少年性を良しとすること自体がまさにジャニー氏の影響を感じさせるものでもあり、そうした価値観から距離をとったマネジメントへの転換を見せていくことも必要だ。メジャーデビューまでの道のり同様に、血と汗のにじむ努力が必要とされるだろうが、きっとイノッチならやってくれると信じたい。

冨士海ネコ(ライター)

デイリー新潮編集部

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